第7話 頼りにならない消費者センターの担当者と、引き出しに残った曇り
本当は誰かに、胸の内を聞いてもらいたかったが、
「バカじゃないの」
って責められるのが怖くて、誰にも言えずに1人で抱え込んでた。ただ、この時、それ以上に不安に感じてたのは
「竜太やサイトたちが、私の跡をつけてきたり、襲ってくるような出来事に遭遇したらどうしよう…」
それが怖くて、外から一歩も出られず、夜も碌に眠ることができずにいたが、
「詐欺にあったかもしれない」
ということから、いつまでもこのままってわけにもいかないし、とりあえず、消費者センターに問い合わせをした。電話口の女性に
「SNSで出会った男性に、マシュマロというサイトに誘導され、2日で合計10万円の大金を振り込んでしまって…」
と冷静に伝えると、電話口の女性は、
「詐欺被害のお問い合わせですね。承知しました。では今後、東野という男性が対応致します。詐欺に遭ったという証拠のようなものを、お手数ですが、こちらの消費者センター宛にまで送っていただけますでしょうか? また、逃げられる可能性もあるので、サイトには、消費者センターに問い合わせたことは言わないでください」
と言われ、私は
「分かりました」
と返答した。
ただ、私は
「竜太やサイトたちが、私の跡をつけるようなことをしてきたら、襲ってきたらどうしよう」
そのことで、すごく不安に駆られてたので、それを電話口の女性に伝えると
「まず、サイトたちが、あなたの跡をつけてきたり、家まで押しかけて来るケースはほとんどないので、大丈夫だと思います。もし、そのようなことがあった場合は、警察に通報しましょう」
と返答された。
電話口の女性に言われた通り、私は竜太とのやりとりを写メですべてスクショし、それらをアプリで分かりやすくひとまとめにし、電話で伝えたことをメモにも書いて一緒に同封し、消費者センターに郵送した。
お電話で対応してくれた女性は、親身になって私の話を聞いてくれてる感じがしたが、私を担当してくれた東野さんという男性は、あまり頼りにならず、どこか事務的で、私の不安や気持ちには寄り添ってくれてないような印象を受けた。私が問い合わせる度、状況は教えてはくれたが、それもなんだか他人事のような感じの言い方で
東野:サイトからは『3万だけ返す』と返答がきました。どうしますか? ここで合意しますか?
と返答されたが、私が失ったのは10万という大金だったから、それがたったの3万しか返金されないのは、どうしても納得がいかず、思い切って、私の主張を東野さんに伝えてみることにした。
私:私ごとになるんですが、私今1人暮らしで、頼れる人もいないし、東野さんにとっては、他人事かもしれませんが、10万という大金は私にとっては貴重なお金なんです。だから、全額返してもらわないと、納得ができなくて
と東野さんに必死な思いで伝え、私の主張を最後まで聞いてはくれたが、
東野:門脇さんの気持ちは良く分かりますし、この消費者センターに問い合わせてくる人はみんなそう。このサイトで被害に遭った女性はあなたを含め、5人くらいかな。実際に複数人の被害者がいますし、既に証拠も揃ってるから、裁判を起こせば、きっと門脇さんが勝つと思うんですよ。ただ、サイトが責任を取らず、逃げるケースも少なくないし、裁判をやるにしても、かなりの費用がかかってきます。それでも納得いかないなら、警察に被害届を出すこともできますが、どうしますか?
と東野さんに委ねるように質問され、
私:とりあえず、サイトが全額返金するって言ってくれるまで、様子を見ることにします。
と伝えた。
私はロマンス詐欺に遭ったと自覚してから、ものすごく不安に駆られてたから、暇さえあれば、いつも消費者センターに問い合わせていたが、最後に問い合わせた時には、東野さん曰く、
東野:もうサイトには電話も繋がらない状態になってしまいました。もしかしたら、逃げられたかもしれません。2週間くらい前に、こちらが問い合わせた時に、最低でも10万は返すようにと主張しましたが、それが原因かもしれません。門脇さんが3万で合意してたら、返金されてたかもしれませんが…
と言われ、相変わらず冷淡な印象を受けたが、この時を振り返ると
「東野さんって、塩対応で冷たいって思ってたけど、水面下で一応、私の希望を叶えてくれる努力もしてくれてたのかな」
と、そう思うことにした。
それから1年の月日が流れ、すっかり忘れかけてた頃、私が返金してもらう際の口座を消費者センターに送ってたからか、サイトから消費者センターを通して3万円だけ返金されてたので、
「もう返ってこないと思ってたお金だったし、たったの3万だけど、ちゃんと返ってきたし、奇跡が起きた」
そう捉えてたから、私の中で『解決した』と思ってたけど、本当は、思い出さないように、心の奥に封印してただけで、まだ浄化されてなかっただけなのかもしれない。
信じたい気持ちが、私の灯りを曇らせていく。
その曇りは、まだ静かに、私の心の引き出しの中で眠っていたのでした。




