第62話 『無責任』という名の暴力
婚姻費用のこともあり、私は必死に和馬と毎日連絡を取ろうとしてた。けど、和馬は約束を一方的に破り、私を突き放した。
生活がかかっていることを知っていながら、平気で無視するその態度に、ますます怒りが込み上げてきた。
別居したばかりの頃、手元の貯金は、わずか3万円。来月の給料日までに、携帯料金など支払わなければならないものがあるのに、振り込みが途絶えれば、すぐに行き詰まる。数年前に債務整理をしていたから、借り入れはできないし、そもそもカードローンに頼る気もなかった。
「このまま振り込まれなかったら、どうしよう」
その恐怖と同時に、
「何が何でも、これまで和馬に搾り取られてきたお金は、利子付きで返してもらわないと気が済まない」
そう強く思ったし、
「このまま夜逃げされたらどうしよう」
そんな不安にも苛まれていた。生活の基盤を握られていることが、私をさらに追い詰めていた。
これが不倫だったら、証拠を掴んで、慰謝料を請求できるだろう。だが、経済的暴力は、法律上、存在はしてるが、決定的な証拠がなければ、所詮、
「夫婦なんだから」
という理由で片付けられることがほとんどで、私はただ、追い詰められるばかりだった。結局、和馬と話し合うこともできないまま、月日だけが流れ、婚姻関係を続ける意味など、もう残っていないと感じた。
弁護士アプリで複数の弁護士に問い合わせても、
「決定的な証拠がなければ動けない」
「お金がない人は承れない」
と冷たく突き放されるばかり。中には
「そんな目に遭う方も悪い」
と言い放つ人までいた。彼らの態度は、自分の利益しか考えていないようにしか見えず、私は怒りと失望で胸が焼ける思いだった。
和馬の無責任さが、私を精神的に追い詰めた。あいつの裏切りがなければ、こんな絶望に陥ることはなかった。
「こんな世の中だから、悪者がのさばり、弱者が踏み潰されていくのだ」
そう思わずにはいられなかった。
可愛がってくれたおじさんも、
「悩みごとがあったら聞くよ」
と言ってくれたことがあったから、話す機会はいくらでもあった。けれど、身近な人ほど相談できない私は、誰にも言えないまま、1人で抱え込んでいたのでした。




