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灯りの記録 〜見て見ぬフリをしてきた過去と向き合うために〜   作者: なかみね ひまり


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第61話 秋から春へ、果樹園の灯り


和馬と別居してから、私は住み込みの果樹園で働き始めた。



私が働き始めた頃は、ちょうど収穫の秋で、赤く実ったリンゴや房ごとに輝くぶどう、夕陽に染まる柿、手のひらに収まるみかんなどを収穫した。


時々、出荷できなかった果物を口にすることができ、その甘さに幸せを感じてたこともあった。


朝早くからの仕事は、低血圧の私にとっては、体力的に大変ではあったが、『果物が大好き』っていう気持ちが強かったため、少しだけ転職のようにも思えた。孤独の影に押し込まれた日々でも、果樹園の秋は、確かに私を支えてくれた。



私を雇ってくれたおじさんは、とても面倒見の良い人で、私を娘のように可愛がってくれ、日常で必要なものはいつも買ってきてくれたから、生活していく上で、困ることはなかった。その温かさは、果樹園の灯りと同じように、私を支えてくれた。


果樹園での暮らしは、朝の冷たい空気に包まれながら始まった。鳥の声とともに畑へ向かい、果物の匂いに満ちた空間で汗を流す日々。仕事終わりに見上げる夕空は、疲れた身体を静かに包み込み、ささやかな安らぎを与えてくれた。



冬になると、冷たい風に頬を切られながら枝を落とす音だけが響いた。霜に覆われた畑の静けさは、制度の壁の冷たさと重なり、孤独を深めた。



やがて春が訪れ、桃の花が一斉に咲いた。指先で花を間引くたびに、孤独の中に小さな灯りを見つけるようだった。果物の成長を見守るうちに、自分自身も少しずつ前へ進んでいるように感じた。収穫した果物を食べている時が、唯一の癒しであり、半年間の暮らしを支える力となってた。


そして、仕事に打ち込んでいる間だけは、和馬のことを忘れることができ、心が少しだけ、軽くなるのを感じていたのでした。

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