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第8話 依頼への旅立ちと再会

 「じゃあ……行ってきます!」

 サクラは小さなリュックを背負い、緊張した笑みを浮かべていた。

 冒険者としての正式な依頼受注は、ギルドに所属する彼女にしかできない。

 俺はテーブル越しに軽く手を振った。

「気をつけてな。肩肘張らずに確実にこなしてこい」

「はいっ!」


 そう言って駆け出していく背中を見送り、俺はひとりギルドに残された。

 とはいえ、ぼんやり待っているわけにもいかない。

 俺自身の生活費も必要だし、サクラを支えるためにも情報収集は欠かせない。


「さて……働き口と情報源、両方を探すか」


 昼下がりの街に出ると、陽光に照らされた石畳が眩しい。

 活気ある市場の通りを抜け、人波に紛れて歩いていると――


「あれ? 異国の人ではないですか!」


 聞き覚えのある声に振り返る。

 そこに立っていたのは、異世界に来て最初に出会った、あの熱狂的なダンジョル好きの青年だった。

 今日も眼鏡をかけ派手なTシャツ(文字は読めないが「推し」を強調していることだけは伝わる)を着ている。


「……あんたは」

「覚えててくれたんですね! 改めて自己紹介を。私はヲータックと申します」

「ヲータック、ね」

 なんというか、そのまんまな名前だ。


 俺が状況を簡単に説明すると、ヲータックは目を輝かせて頷いた。

「なるほど! プロデューサー殿は、その子を育てようとしてるんですね!」

「まあ、そんなところだ」

 少し気恥ずかしくはあったが、俺は胸を張って言った。


「俺はプロデューサーだからな」

「おおっ……かっこいいじゃないですか! だったら働き口、ひとつオススメがありますよ!」

「ほう」


 ヲータックが身を乗り出して声をひそめる。

「酒場ですよ、酒場! 冒険者たちが出入りするし、ダンジョン探索の映像もライブで見られるんです。情報収集にもってこい!」


 俺は思わず前のめりになる。

 酒場で働きながら冒険者の様子を観察できる――確かに一石二鳥だ。


「助かった。ありがとう、ヲータック」

「いえいえ! 同じダンジョル好きとして応援してますから!」


 彼と固く握手を交わし、別れを告げたあと、俺は足を向けた。

 目指すは――街の中心にある大きな酒場。


「よし、まずはここから始めるか」


 俺の新たな活動拠点を探す一歩が、静かに踏み出された。



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