第6話 ギルドの現状
「さて……プロデューサーとして動き出すのはいいとして、まずは何から始めるべきか」
口に出してみても、答えはすぐには出なかった。
夢を追う少女を支えると決めたのはいい。だが舞台も環境も、俺が知っていた世界とはまるで違う。まずは足元を固めなければならない。
「えっと……とりあえず、お昼にしませんか?」
隣で控えめに笑った少女――サクラに促され、俺たちは街の食堂へ足を運んだ。
木の香りが漂う素朴な店で、卓に腰を下ろすと、湯気を立てたスープと焼き立てのパンが運ばれてくる。
食事を口にしながら、俺は切り出した。
「まずは君のことを知っておきたい。普段の生活はどんな感じなんだ?」
「生活……ですか。えっと、普段は訓練をしながら、たまに軽い依頼を受けています。でも、報酬は少なくて……正直、あんまり食べていけてません」
「なるほど。家族は?」
「遠くの村にいます。ここに来たのも、自分の夢を叶えるためで……仕送りはもらってません」
――つまり、完全に自立している。だが稼ぎが少なく、このままでは先細りする一方だ。
食事を終えた後、俺たちは再びギルドに戻った。
昼下がりの光が差し込む室内は、相変わらず人の気配に乏しい。壁際の依頼掲示板には色褪せた紙ばかりが並び、どれも報酬は小さく、受け手が長らく現れていないようだった。
「……なるほどな。人がいない理由がよく分かった」
「はい。ギルドの名前はあるんですけど、みんな他の大きなギルドに流れてしまって……」
「ギルマスは?」
「遠征に出たままです。しばらくは戻らないって聞いてます」
小さく肩を落とすサクラの姿を見て、俺は確信した。
――ここを立て直さない限り、彼女の夢は形にならない。
「よし。方向性が見えてきたな」
「……方向性?」
「まずはこのギルドを立て直す。人が集まり、活気が戻れば、君の活動の舞台になる。夢を追うにも、土台が必要だ」
サクラは目を瞬き、やがて少しずつ表情を明るくした。
「……なるほど。ギルドを、土台に」
「そうだ。だから最初の仕事は“現状分析”。どうして弱体化したのかを調べ、改善策を考える。それから一歩ずつ始めよう」
俺は拳を握り、テーブルに軽く置いた。
サクラは真っ直ぐな瞳でこちらを見つめ、静かに頷いた。
こうして――俺たちの最初の目標は、「ギルドの再建」と定まったのだった。




