表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

第19話 次なるステップ

 気がつけば、酒場の椅子に突っ伏したまま朝を迎えていた。

 昨夜の片付けを終えて、そのまま眠ってしまったらしい。

 まだ微かに残る酒と拍手の余韻に包まれながら、俺はぼんやりと天井を見上げた。


(昨日の踊り子はすごかったよな)

(また見たいな、次はいつやるんだ?)


 昨日の閉店帰り際の客たちの声を思い出し、改めてリアナの凄さを実感した。観客を黙らせ、熱狂させる。あれは偶然なんかじゃなく、積み重ねてきた力の証だった。


 ボケーッとしていた俺の前に水が置かれた。


「おかげで店の売り上げが倍になったよ」


 女将がにやりと笑いながら、樽を抱えて歩いていく。

 俺は胸をなでおろし、ほっと息をついた。


 そして帰ろうと思って、舞台の方へと目をやる。

 昨夜の熱気を吸い込んだ板は、まだどこか輝いているように見えた。

 だがその上に、ぐでんと寝そべっている小さな影があった。


「……え?」


 近づくと、まだ寝ぼけ顔の少女が大きなあくびをしていた。


「あの子かい?」


 俺の視線に気づいた女将が、肩をすくめて答える。


「うちのグータラ娘さ。ほっときな」


「は、はぁ……」


 俺はそれ以上は突っ込まず、首をかしげながらギルドへと足を向けた。



---


 通りを歩きながら、頭の中は次のことでいっぱいだった。

 舞台は成功した。だが、これは通過点にすぎない。

 サクラへの指導を続けてもらうためにも、リアナの目標へ繋げるためにも、俺は「次の舞台」を考えなければならない。


(どうやって継続的に見せる場を作るか……。酒場だけじゃ限界がある)

(サクラも練習だけじゃダメだ。あいつを成長させなきゃ、次の一歩は踏み出せない)


 浮かれる気持ちは一瞬で吹き飛び、頭の中に課題ばかりが浮かび上がってくる。



---


 その日の稽古後、サクラが真剣な顔でリアナに向き合った。


「リアナさんの踊りを見て、本当に憧れました。私もあんな風になりたいです!」


 リアナは腕を組んで、少しだけ目を細めた。


「憧れだけじゃ届かないわ。あれは私が血と汗で手に入れた技術だから」


 冷たいような口調。しかしその瞳にはわずかな柔らかさが宿っていた。


「でも……あなたなら可能性はあるわね」


「……!」


 サクラの頬がぱっと赤く染まる。

 その瞬間、彼女の瞳に燃えるような光が宿った。



---


 数日が経った頃だった。

 冒険者ギルドの職員が俺を呼び止めた。


「酒場での噂を聞いたよ。実は……街の祭りで舞台をやってほしいんだ」


「祭りで……?」

 思わず聞き返す。


「規模は大きいし、観客も桁違いだ。だが、あんたたちなら盛り上げてくれるはずだと思って」


 胸が高鳴った。同時に、重い責任も背負わされる予感がした。

 ――酒場での成功は、ただの序章だったのだ。



---


「次は街の祭りだ」


 俺はサクラとリアナを前に告げた。


「俺たちの本当の勝負は、これからだ」


「はい! 必ず役に立ちます!」


 サクラが拳を握り、力強く答える。


「任せなさい」


 リアナは口元に自信の笑みを浮かべた。


 遠くから、祭りの太鼓の音が微かに聞こえてくる。

 胸の奥で高鳴る鼓動と重なり合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ