第19話 次なるステップ
気がつけば、酒場の椅子に突っ伏したまま朝を迎えていた。
昨夜の片付けを終えて、そのまま眠ってしまったらしい。
まだ微かに残る酒と拍手の余韻に包まれながら、俺はぼんやりと天井を見上げた。
(昨日の踊り子はすごかったよな)
(また見たいな、次はいつやるんだ?)
昨日の閉店帰り際の客たちの声を思い出し、改めてリアナの凄さを実感した。観客を黙らせ、熱狂させる。あれは偶然なんかじゃなく、積み重ねてきた力の証だった。
ボケーッとしていた俺の前に水が置かれた。
「おかげで店の売り上げが倍になったよ」
女将がにやりと笑いながら、樽を抱えて歩いていく。
俺は胸をなでおろし、ほっと息をついた。
そして帰ろうと思って、舞台の方へと目をやる。
昨夜の熱気を吸い込んだ板は、まだどこか輝いているように見えた。
だがその上に、ぐでんと寝そべっている小さな影があった。
「……え?」
近づくと、まだ寝ぼけ顔の少女が大きなあくびをしていた。
「あの子かい?」
俺の視線に気づいた女将が、肩をすくめて答える。
「うちのグータラ娘さ。ほっときな」
「は、はぁ……」
俺はそれ以上は突っ込まず、首をかしげながらギルドへと足を向けた。
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通りを歩きながら、頭の中は次のことでいっぱいだった。
舞台は成功した。だが、これは通過点にすぎない。
サクラへの指導を続けてもらうためにも、リアナの目標へ繋げるためにも、俺は「次の舞台」を考えなければならない。
(どうやって継続的に見せる場を作るか……。酒場だけじゃ限界がある)
(サクラも練習だけじゃダメだ。あいつを成長させなきゃ、次の一歩は踏み出せない)
浮かれる気持ちは一瞬で吹き飛び、頭の中に課題ばかりが浮かび上がってくる。
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その日の稽古後、サクラが真剣な顔でリアナに向き合った。
「リアナさんの踊りを見て、本当に憧れました。私もあんな風になりたいです!」
リアナは腕を組んで、少しだけ目を細めた。
「憧れだけじゃ届かないわ。あれは私が血と汗で手に入れた技術だから」
冷たいような口調。しかしその瞳にはわずかな柔らかさが宿っていた。
「でも……あなたなら可能性はあるわね」
「……!」
サクラの頬がぱっと赤く染まる。
その瞬間、彼女の瞳に燃えるような光が宿った。
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数日が経った頃だった。
冒険者ギルドの職員が俺を呼び止めた。
「酒場での噂を聞いたよ。実は……街の祭りで舞台をやってほしいんだ」
「祭りで……?」
思わず聞き返す。
「規模は大きいし、観客も桁違いだ。だが、あんたたちなら盛り上げてくれるはずだと思って」
胸が高鳴った。同時に、重い責任も背負わされる予感がした。
――酒場での成功は、ただの序章だったのだ。
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「次は街の祭りだ」
俺はサクラとリアナを前に告げた。
「俺たちの本当の勝負は、これからだ」
「はい! 必ず役に立ちます!」
サクラが拳を握り、力強く答える。
「任せなさい」
リアナは口元に自信の笑みを浮かべた。
遠くから、祭りの太鼓の音が微かに聞こえてくる。
胸の奥で高鳴る鼓動と重なり合っていた。




