第14話 基礎訓練の始まり
「……お願いします!」
サクラは小さく息を吸い込み、真っ直ぐ俺を見てそう言った。
不安そうに揺れる瞳には、それでも覚悟が宿っている。
よし、やるしかない。
ここからが本当の意味でのプロデュースの始まりだ。
「じゃあ最初の課題だ。歌いながら動くことを覚えよう」
「う、歌いながら……動く?」
「そうだ。戦闘はまだ危険だからな。まずは簡単なステップでいい。
足を左右に動かして、リズムを刻みながら歌ってみろ」
訝しむような表情を浮かべながらも、サクラは立ち上がり、俺が指示した通り足を踏み出した。
そして声を乗せる。
――しかし。
「はぁ、はぁ……っ!」
すぐに息が切れ、歌声が途切れてしまう。
額には汗が浮かび、肩で大きく息をしている。
「む、難しいです……!」
サクラは悔しそうに拳を握った。
……まあ、予想はしていた。いきなり上手くいくはずがない。
けど、ここまで苦戦するとなると――。
(やっぱり俺ひとりじゃ限界があるかもしれないな……)
思わず、元の世界を思い出す。
アイドルたちを支えてくれていた、ダンストレーナーやボーカルトレーナーたち。
専門の指導者がいたからこそ、彼女たちは輝けたのだ。
(同じように、この世界でも……誰か“指導者”を探す必要があるな)
昼頃、サクラはギルドの依頼を受けに出かけていった。
その背中を見送りながら、俺は街を歩き始める。
トレーナーに相応しい人物……そんな存在が、この異世界にいるのか?
考え込んでいると、ふと前方でざわめきが起こっていた。
「なんだ?」
人だかりができている。中心には――一人の踊り子。
異国風の衣装をまとい、軽やかに舞い踊る姿に、観客たちが息を呑んで見入っていた。
その一挙手一投足には不思議な力があった。
ただ美しいだけじゃない。視線を奪い、心を惹きつける“魅せる踊り”。
俺は思わず拳を握る。
(これだ……! 探していた“トレーナー像”だ!)
胸の奥が熱くなる。
サクラに必要なのは、まさにこうした「歌と動きを結びつける力」。
その最初の答えを、俺は今見つけた気がした。
新たな決意を胸に抱きながら、俺は踊り子の舞を見つめ続けた。




