第11話 1日の終わりに
夕暮れ時、サクラはようやく依頼から帰ることができた。
今日一日、荷物を担いで歩き回った疲労が全身にまとわりついている。けれど、その足取りは重くはなかった。
「依頼の達成報告お願いします!」
依頼報告ができる他のギルドに赴き、そこの受付嬢に声をかけ、依頼達成の申請を済ませる。商人からの感謝の言葉や、一緒にいた冒険者たちの評価が報告に添えられていた。受付嬢が「よくやったわね」と微笑んでくれると、サクラは胸の奥がほんのり温かくなる。
ウキウキした足取りで自分のギルドへと帰還し、プロデューサーに依頼報告をしようとギルドの扉を開く。
しかし、ギルドの中を見回しても、彼の姿はなかった。
少し残念に思いながら、サクラは控えの長椅子に腰掛けた。窓の外はすでに薄暗く、街灯の魔法灯がひとつ、またひとつと灯り始めている。
椅子に身を預けると、疲れが一気に押し寄せてくる。
サクラは瞼を落とし、いつしか浅い眠りに沈んでいった。
---
ギルドの扉が軋む音で、サクラははっと目を覚ます。
振り向けば、見慣れた姿がそこにあった。
「おかえりなさい!」
思わず声が弾む。
彼――プロデューサーは少し驚いたように目を丸くした後、柔らかく笑った。
「ただいま。……依頼は無事に終わったか?」
「はい! 最後までちゃんと運びきれました。依頼主さんや一緒にいた人たちからも褒めてもらえて……嬉しかったです」
サクラは誇らしげに胸を張る。
プロデューサーも頷き、安心したように息をついた。
「よく頑張ったな。俺も今日は酒場で働いてきた。……途中で、すごいものを見たよ」
「すごいもの?」
「“銀翼の歌姫”のパーティーだ。ダンジョルもいて……彼女が歌った途端、仲間たちの力がまるで別物になった」
思い出すように語る声に、サクラは目を輝かせた。
「やっぱり……歌には力があるんですね」
「ああ。アイドルと冒険、その二つが交わる光景を、俺は確かに見た」
二人はしばし、今日の出来事を報告し合い、笑みを交わす。
そしてサクラは大きく伸びをすると、立ち上がった。
「それじゃあ、私は帰りますね。また明日、一緒に頑張りましょう!」
「おう。気をつけて帰れよ」
小さく手を振って、サクラは夜の街へと帰っていった。
---
残されたギルドは静かだった。
カウンターの明かりがぼんやりと灯り、外の虫の声が遠くから聞こえてくる。
俺は椅子に深く腰を下ろし、ひとり今日を振り返った。
サクラの成長。自分の手にした仕事。そして――目の当たりにした、歌がもたらす力。
「俺たちは、まだ始まったばかりだ……次は、どう動くべきか」
考えを巡らせながらも、疲労が身体を蝕んでいく。
気づけば瞼は重くなり、思考は途切れ、俺は静かな眠りに落ちていった。
こうして、二人の最初の一日は幕を閉じたのだった。




