表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

第10話 ダンジョンの冒険者たち

 酒場の喧騒が少し落ち着いた頃、女将が言った。

「新入り、休憩にしな。どうせなら見ときな、あんたの好きそうなもんが映ってるよ」


 カウンター奥の大きな水晶板――冒険者たちの戦いを中継する魔法の映像装置だ。

 俺はジョッキの影に腰を下ろし、息を整えながら視線を向ける。


 映っていたのは、見知らぬ冒険者たち。軽快に立ち回る盗賊、巨大な盾で仲間を守る騎士、後衛で呪文を紡ぐ魔導士。

 まるで教科書に載るようなバランスの取れたパーティーが、次々とモンスターを倒していく。


(なるほど……世の中にはこんな実力者たちがごろごろいるのか)


 飲みかけの水を口に含みながら、自然と息を呑む。

 俺の隣でも冒険者たちが歓声を上げ、情報を交換している。



---


 一方その頃――。


 サクラは背負った荷物を最後の目的地に届け終え、深く息を吐いていた。

 依頼主の商人が破顔する。

「いやあ、助かったよ! 本当は誰もやりたがらない地味な運搬依頼なのに、最後まで泣き言も言わずに運んでくれて」


 仲間の運搬業者たちも腕を組み、しげしげとサクラを見やった。

「正直、最初は足手まといになると思ったんだがな」

「すまなかったな。よく頑張った。これなら次の依頼も任せられる」


 サクラは疲れた笑みを浮かべながらも、胸を張って頭を下げる。

「ありがとうございました! またよろしくお願いします!」


 その瞳は、最初にギルドで見たときよりも、ずっと強く輝いていた。



---


 酒場の映像は切り替わり、ざわつきがさらに大きくなる。


「おっ、有名どころが来たぞ!」

「“銀翼の歌姫”のAランクパーティーだ!」


 水晶板に映し出されたのは、有名どころの冒険者パーティーらしい。

 そして、その後衛に立つのは銀髪の女性冒険者。

 戦士たちが激しく斬り結ぶ最中、彼女が一歩前に出る。

 澄んだ声が響いた瞬間、前線の仲間たちの動きがまるで別人のように変わった。


 ーーーダンジョルだ。


 剣が鋭さを増し、盾は鉄壁となり、魔法の詠唱は一気に速度を増す。


(……これが、ダンジョンでの歌の力か)


 アイドルのステージを思わせる光景に、俺は釘付けになった。

 歌が流れ、その輝きが増す。その姿は、俺のかつての夢と重なって見えた。


 だが――。


「新入り! 休憩は終わりだよ!」

 女将の声が響き、映像は視界から遮られた。


「はいっ!」

 慌てて立ち上がり、再び皿を抱えて走り回る。


 グラスが飛ぶように空き、料理の注文が次々と入る。

 冒険者たちの笑い声と、遠くの映像装置から響く戦いの音が交錯する中で、酒場は再び嵐のような忙しさに包まれていた。


 俺の一日はまだ終わらない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ