【迷宮】第14話 緑の城壁
「待ちなさいって。1人だけ先に出ちゃったら危ないでしょう。アンタね、御主人様の荷物を預かってる自覚あるの?」
オルティナは、ノアールが背負っている荷物袋を引っ張って引き留める。あの荷物袋の中には、わたしの鎖帷子と3日分の保存食が入っている。
ノアール自身は、この先に「頭の中に響いてくるモノ」を感じているようで、早く進みたがっているのだ。
「御主人様を1人にしたら、アタシが喰らっちゃうよ」
オルティナがニタリと笑った刹那、ノアールは空間を捻ってわたしとオルティナの間に現れた。
「え?」
不意に消え、そして背後に現れたノアールに、オルティナは眼を丸くする。ラグドールも言葉を失って、わたしとノアールを交互に見る。
「この娘には、冗談は通じないよ。言葉を選ぶように言っておいておくれ」
ラグドールは、口開けたまま「ああ」と力なく返事をした。
およそ半日。
先行したドーゼの冒険者たちが踏みならした道を辿ると、木々の間から緑色の壁が見えた。びっしりと蔦が広がった壁、その蔦を剥がすと下に石組みがあった。城壁が蔦に覆われていたために、森の緑の中に紛れて、発見されるのが遅れたのだろう。
城は、中庭を囲んでコの字をしていた。コの字の隅部分には、最上部に胸壁を備えた円形の塔が聳える。中庭に内面して部屋になっているようだった。
かなり古い時代の城であるのは間違いなかった。装飾のない、利便性だけの造りは「砦」か「牢獄」を思わせた。
「1階部分と2階部分の2層の建物だな。明かり取りの窓は、縦に細長いスリット状の開口部が横に並んでいる。設けられているのも部屋の高い位置だ」
ラグドールは、城の形状を分析しながら、自分の持つ知識と照合しながら「城の用途」を推理した。
「この開口部は、中庭の眺望のために設けられた窓ではない。城門もないから砦ではなさそうだ」
中庭には石が敷き詰められているが、その間から雑草が伸びて荒れ果てている。5頭の馬が、その雑草の匂いを探り食んでいた。
「ドーゼの冒険者たちが連れてきた荷運び用の馬だな。この中庭で野営するつもりだったようだ」
馬の周囲には、焚き木の用意と肉と野菜を調理する道具が広げられている。おそらく、城の中に入って探索する組と中庭で野営の準備をする組に分かれたのだろう。
「城中から凄く濃い魔が滲み出しているね。城の中から《《人の気配》》を感じるけど……よくわからないないんだよねえ」
オルティナは「よくわからない」人の気配に困惑していた。ノアールも何故かキョロキョロとして小首を傾げている。




