【迷宮】第13話 理ーことわりー
ドーゼの町から送り込まれた冒険者は20人くらいだったか。その全員が古城へ向かっているわけではないだろうが、10人以上はいるはずだ。
「ドーゼの冒険者連中が先を行ってくれたおかげで、我々は道を間違えないで済みそうだ」
大人数が森の草を踏みしめたので、道筋がはっきりと残っている。ラグドールは、それも計算していたかも知れない。
「お宝が持ち出されてしまう心配はしてないみたいだね」
「連中には、何がお宝かがわからないだろう」
金銀財宝のようなお宝なら、依頼人やギルドを含めて単純に取り分を決められるが、古い記録や文典の価値は《《わかる者》》にしかわからない。ラグドールの口角が微かに上がる。
「私にとっての《《お宝》》は、私が独り占めできるかも知れないのだよ」
その中に、太古の昔に失われた魔法もあるのだろう。
失われた魔法を欲しがる連中は沢山いる。しかし、見つけるのが困難な上に、それを見つけたところで使えるかどうかわからない。ギルドで、オルティナがギルド長の傷を治療したように、人には使えない魔法もあり得る。
「なるほどね。知識があって、魔人とも組んでいる魔導士ラグドールは最強の冒険者でもあるわけか」
煽てたつもりだが、その言葉にラグドールは顔を顰める。それは、わたしにとっては意外な反応だった。
「魔法は万能ではない。水が、高き所から低き所へ流れ落ちるのが理なら、魔法でできることは、その流れを僅かに早くしたり遅くしたりする程度だ。その理から免脱する魔族となったところで、理そのものを変えられるわけでもない」
オルティナは、わたしとラグドールの少し前を歩いている。上機嫌で先を歩くノアールの後ろについて、進みすぎないように制している。その、オルティナの背中を見つめるラグドールの視線は寂しげだった。
「私は、いずれ年老いて死ぬ。しかし、理からは外れてしまった彼女は死ねない」
オルティナと違い、ラグドールは歳を取る。いずれはオルティナを残して死ぬ……それは、確かに変えられない理だ。
「もしも……貴女がいなくなったら、残されたあの使い魔は《《どうする》》のだろうな」
わたしがいなくとも、ノアールの旅はかわらないだろう。呪いや魔物を探し歩いて、魔を喰らい続けるだけだ。時が来るまで。
しかし、ラグドールの本当の意図は違う気がする。
「悪いね。わたしは、あんたの問いに答えられないよ」
ラグドールがいなくなれば、オルティナに魔を流し込む者はいなくなり……魔人の本性として人を襲うようになるかも知れない。




