【迷宮】第11話 ドーゼの無法者
少しするとラグドールが、地元の冒険者と共にギルドに駆けつけて来る。
「手間を掛けてしまったようだ。私からも礼を言う」
混乱しているギルドを見たラグドールが、わたしに頭を下げる。酌をさせられていた女職員は、オルティナの姿を見つけるとハッとする。そして、彼女に縋り付くと、強引に建物の奥へ引っ張って行った。
奥の部屋には、男たちが閉じ込められていた。皆、顔に痣ができていて痛い目に遭わされたらしい。だが、背中に傷を負い突っ伏している者もいた。
「ギルドの長が、剣で傷を負わされて……」
無法者を止めようとして、剣で斬り付けられたのだと言う。
オルティナは、床に這いつくばって荒く息をしている男の傍に近づいて、背中の傷に右の掌を乗せた。その掌から白い靄が出て男の傷を包んでいく。
「……あれは?」
男の傷から流れる血が止まり、少しずつ傷が塞がっていくように見えた。
「魔力を流して、身体の回復力を高めているのだ。応急処置にはなる」
「そんなことができるのかい?」
するとラグドールは、わたしの耳元へ顔を寄せて小声で説明をしてくれた。
「本来……人の肉体には魔力が流れていないので、放出することもできない。魔族となったオルティナだから使える魔法だ」
思わず、オルティナを凝視してしまった。
「傷を治せば、その分だけ体力を消耗させてしまう。傷が治っても衰弱死を招いては元も子もない。傷の治癒と消耗を正しく見定められないとならないのだ」
「……すごいね」
いや、これは本当に感心しているのだ。感心の度合いが大きすぎて、言葉にできない。
オルティナは、大きく息を吐いて右手を降ろした。顔に疲労の色が浮かんで見えるのは気のせいではないだろう。傷からの流血が止まると、苦痛に顔を歪めながらも起き上がった男は、オルティナに礼を言った。
オルティナに驚いたが、ラグドールもギルド職員から丁寧な扱いを受けている。地元の冒険者では重鎮のようだった。
解放された職員が、混乱したギルドの整理を始める。ラグドールは、ギルドの部屋を一つ借りると、そこへわたし達を招いた。
「で、どう言う事態になってるんだい?」
「ドーゼの町から送り込まれた連中だ。この町のギルドが『古城探索』依頼を調整できないのを良いことに、力ずくで割り込もうとしてるのだ」
ドーゼの町と言うと、ランスレット伯の館のある町だ。オルドガの町と比べてずっと大きな町で、ランスレット伯領の有力者も揃っている。有力者の後ろ盾を得ている連中が、ゴリ押しで『古城のお宝』を手に入れようとしている訳か。




