【迷宮】第10話 無法者ギルド?
朝方の3人は「古城から手を引け」と脅迫してきた。これが冒険者ギルドの手配なら悪質過ぎる。本気でお灸を据えてやるつもりで、ノアールを連れて冒険者ギルドへ向かう。
ギルドの建物に入ると、酒の匂いが鼻をついた。大きな町のギルドなら飯屋や酒場を併設していることもあるが、この田舎町のギルドは違ったはずだ。
10人前後の冒険者と思われる連中が、酒を呑みながらカードやサイコロのゲームに興じていた。サイコロの出目につられるように怒声や歓声があがる。
直ぐに「金を賭けてる」とわかる騒ぎ具合だ。
冒険者連中は、剣は携えているが鎧ではない普段着だ。大きな町で流行っている派手な色の布地で、田舎町の冒険者とは違う感じがした。
受付には、職員らしい者はいない。冒険者連中に酌をしていた女が、こちらを振り向いた。酷く険しい顔つきで、縋り付くような眼をしている。
あれ? 確か、このギルドの女職員だったはずだ。
農家の手伝い……と言う名目の「荒れ地の開墾」仕事を、わたしに回してきた女の顔は忘れていないぞ。
どうやら抗議とか苦情と言える状況ではなさそうだった。出直そうと思って踵を返すと「あの!」と女の声で呼び止められる。
「?」
しかし、その声に振り返るより先に酒の匂いが近づいて来ていた。
「ちょうどいいや、姉ちゃん。こっちへ来て酌をしな」
既に酔いが回り眼が据わっている男は、ノアールの肩に手を掛けようとした。
「止めて下さい。服にお酒の匂いが移ってしまいます」
ノアールの左腕に、伸ばした手を振り払われた男は、脚を縺れさせてひっくり返ってしまう。男の身体が建物の扉にぶつかった音で、中にいた冒険者連中の視線がわたし達に向いた。
……まあ。
酒で酔っ払っている相手なら、10人でも20人でも問題はなかった。少し痛い思いさせて、建物から追い出す。ノアールは、酒の匂いを嫌って距離を取りやがったので、わたし一人の仕事になった。
図らずも助けることになった女職員から事情を聞くと……。
他所から流れてきた《《ある冒険者》》の一団が、地元や他の冒険者を脅迫したり襲ったりして『古城探索』依頼を独占しようとしている、と言う。
「余所から来た冒険者は、Aランクの探索依頼は受けられないんだろう?」
女職員は俯いたまま返事に詰まる。後付けしたその規則は、罰則も取り締まる実行力もない中途半端なものだった。
結果として、《《お行儀の良い》》冒険者はルールを守って町を去り、ルールを守らない《《無法者》》だけが町に残ってしまう。
その、無法者に実力行使されてこの様か?




