【迷宮】第8話 印を刻む
それにしても、古城探索の依頼が「最終的に力ずく」になると言うのは如何なものかと思う。そうならないよう調整するのが冒険者ギルドの役割だが……。
「この町の冒険者ギルドは依頼の調整ができないのかね」
「古城のことがランスレット伯領全域に知れ渡ってしまったからな。金持ちや有力者を後ろ盾にする依頼もあるし、他の町から冒険者を派遣してくる場合もある。田舎町の冒険者ギルドでは調整できなくなったのだよ」
「ああ、そうかい」
嫌がらせを受けた身として同情する気にはならない。吐き捨てるようなわたしの言い方に、ラグドールはギルドへの弁明を諦めた。
「この、オルドガの町の冒険者同士なら、無駄な戦いをせずに駆け引きもできるだろう。しかし……余所から流れてきた冒険者や他の町から派遣されてきた冒険者は、そうではない」
目の前の報酬だけが目当てだろうからな。
「考えておいてくれ。悪い取り引きではないと思う」
それだけ言うと、ラグドールは席を立つ。先に戻った「オルティナのことが気になる」そうだ。
「姉弟子は、既に亡くなったことにしている。オルティナの名は偽名だし、魔族であることも隠している。彼女のことは、魔導士である私の助手……と言うことにしているので、話を合わせて欲しい」
「わたしにペラペラ喋ってもいいのかい?」
ラグドールは「お互い様だ」と、短く答えただけだった。わたし達の方もノアールの存在を隠しているから、交換条件のつもりだろう。
わたしもノアールと共に宿に戻るが、ノアールはまだオルティナに対して機嫌を直していない。
「あの魔人は、ラゲルナ様に印を刻もうとしたんです」
「印?」
「これは『自分の獲物である』と言う意味の印です」
わたしの喉元に爪を立てようとした時か?
そう言えば、少し前にも魔人に狙われた。あの時は「心臓を生きたまま取り出される」ところだったな。どうやら、魔人の眼には、わたしに纏わり付いている魔がよく見えるようだ。
それとも、わたしが美味しそうに見えるのだろうか?
「それならノアールが、わたしに印を付けておいておくれよ。魔人に会う度に狙われたら身が持たないからさ」
「妾は、魔物ではありませんから印なんて付けませんよ」
魔物でない……からではなく、単に面倒くさがり屋なだけだろう。そのくらい捕食者の責任でやっておけよ、と言いたい。
……あれ?
ラグドールは、オルティナを「人を誰1人として殺めてはいない」と言ったはずだ。それが……どうして、わたしの身体に「自分の獲物」を示す印を刻もうとしたのか?




