【迷宮】第2話 古城
冒険者ギルドで「魔物討伐」に関わるような情報が得られれば良かったのだが、嫌がらせで無理そうだ。それでも何か仕事をこなせば、町の住民から話を聞く機会もあるかも知れない。
「教会の庭の草刈り……と言う依頼のはずだよね?」
教会なら、神官から話を聞けると思ったのだが……しばらく無人でいた間に、野盗の根城にされてしまった教会だった。野盗を追い出して、草刈りまでやって誰とも一言も話す機会がなかった。
「街道に設置された町への看板の修理……だったよね?」
街道は土砂崩れで埋まっていて、土砂や岩を退けるのにノアールの手を借りても数日かかった。
「農家の畑仕事の手伝い……って聞いたはずだけど?」
所有者のいない荒れた土地の開墾作業だった。さすがにやっていられない。
どうやら「レイドリク伯の紹介状」を持ってきたわたしを、早くこの町から追い出したいらしい。
「東の森で、記録にない古城が見つかったんだよ。その探索に行く冒険者を集めてるんだ」
ようやく、それらしい情報が得られた。
冒険者ギルドから紹介された仕事などしないで、飯屋で食事をしていれば良かったのだ。ノアールにニコニコさせていれば、少し腕におぼえのある連中が「オレは、こんな依頼を受けている」と自慢がてら教えてくれる。
宿屋でも「金払いのいい客」と思われているから、御主人や女将さんが耳にした噂を教えてくれた。
「記録がないってことは、忘れられた古い城なのか……それとも、何らかの理由で記録を消されたかした城ってことさ。記録を消された城なら財宝が隠されてるかも知れないし、古い城なら今は失われた魔法が見つかるかも知れない。それで冒険者や魔法使いは色めき立ってるんだよ」
飯屋で仕入れた情報に、なるほどと思う。余所から来た冒険者に財宝や失われた魔法を奪われるわけにはいかない。嫌がらせにも意味があったわけだ。
大昔の城から見つかった粘土板に記された呪詛が、失われた魔法だったと言う話は聞いたことがある。魔法使いが使う炎を打ち出す筒状の呪具も、原型になったのは古い城から見つかった古の呪具だ。
ノアールとそれを話すと、やはり舌舐めずりをして機嫌が良くなった。ここしばらく、何も喰らわせていなかったから久しぶりの御馳走だろう。
……しかし、だ。
「ノアールが上機嫌になるってことは、面倒な魔物がいるかも知れないんだよね?」
「うーん。どう、面倒なんでしょうか?」
いや……ノアールに取っては、全然面倒ではないのだろうけれどね。わたしは2回か3回死にかけた記憶があるよ。




