【片足の騎士】第13話 冒険者ギルド
ナルシエの町にも冒険者ギルドはある。
少し確認しておきたいことがあるので、ノアールと建物に入ってみた。入った途端に、酒の臭気に溢れていた。
(冒険者ギルドと言うより酒場だな)
内部の半分がホールになっていて、集まっている連中はテーブルを囲んで酒をのんでいる。奥の方が厨房になっているらしく、酒や料理も次々運ばれてくる。
正直に言うと、雰囲気はとても悪い。
いや、正確に言えば「わたし達に対する」雰囲気が悪い、だな。
ガゼルをお仕置きして、ゼークトの市警に引き渡した……それが、わたし達であることは、このナルシエの町に知れ渡っている。わたし達は、他所の冒険者で「ガゼルの懸賞金目当てにナルシエの町に来た」と言うわけ。
町の住民の反応は2通り。
女癖と性格の悪い領主の子息がいなくなって清々している者は、わたし達には好意的だ。逆に、ガゼルの仇討ちをすれば領主に取り入るチャンスになると思う者もいて、そう言う連中は敵意を向けてくる。
宿の女将さんや緑の服の修繕を引き受けてくれた仕立屋は前者。冒険者ギルドの雰囲気は後者の方らしい。
ノアールを入り口の近くに待たせて、わたし1人で受付に向かう。
「魔法使い1人と剣使い3人のパーティは、登録されてるかい?」
孤児院を襲おうとしたガゼルが連れていた4人。呪具を使う魔法使いが混じっていたのだから、単なるならず者ではなく冒険者だったかも知れない。
受付の若い男は、口ごもって返事を渋った。すると奥から年配の男が出てきた。それに合わせて、わたしの周りに冒険者たちが集まり出す。
「それを聞いてどうするんだ?」
この、受付に立った男の合図で一斉に斬り掛かって来そうな雰囲気だ。
「別に」
短く答えて踵を返す。取り敢えず、確信が持てたから今日のところは引き下がることにする。孤児院のラムンやライセンの名前を出さないようにして正解だったな。
入り口に待たせたノアールと連れて、ギルドの建物を出る。
「今日は、誰も声をかけて来ませんでした。妾、笑顔の作り方が変だったのでしょうか?」
ああ。いつも、あんな場所にノアールを立たせておくと下心のある男どもが寄ってくる。誰1人ノアールに声をかけなかったなら、あの場に居た全員が「ガゼルや領主ガルディバ伯の息のかかった連中」だったかも知れない。
「気にしなくていいよ。緑の服が直れば、またみんな声をかけてくるさ」
「ああ、そうですね!」
ノアールの声とテンションが急に高くなる。緑の服が直るのを本当に心待ちにしているようだ。




