【片足の騎士】第11話 懸賞金
わたしとノアールは、ナルシエの町にいる。町の中心街に宿を取っているのだが、あと数日はこの町に留まらないといけない。
『ガゼル・ドゥ・ゴルディバが、ナルシエの町にいる』
とゼークトの町の市警に手紙を送ったら、市警の動きは早かった。左足骨折の治療中であるにも関わらず、ガゼルはゼークトの町へ連行されて行った。医師の同行が許されたのはギリギリの温情かも知れない。
すると市警から、わたしにバーガムディ公がかけた懸賞金を受け取れるからと打診があった。
旅の先で冒険者の仕事で金を稼いでいるが、まとまった金を貰えるならそれに越したことはない。
以前に仕えていたレイドリク伯の推薦状で、身元の証明も直ぐに終わり、ゼークトの町からの両替証が届くのを待つことになったのだ。
概ね大きな町なら両替屋はある。当然のことこのナルシエの町にも、割と大きな両替屋がある。
両替屋は、国や地域によって異なる貨幣を、それぞれの地で使いやすい地元の貨幣に交換してくれる。
しかし、商人や旅人は違う使い方をする。
ある町の両替屋に金を預けて、別の町の両替屋でその金を受け取るのだ。その2カ所の両替屋が取引しているのが絶対条件だが、そうすると商人や旅人は、直に大金を持ち歩かないで済む。
持ち歩くのは、両替屋に金を預けた証文だけ。証文だけなら泥棒や野盗に奪われても、金は預けた本人でなければ受け取れない。
と言うわけで、バーガムディ公がわたしの名前でゼークトの町の両替屋に預けた証文が届くのを待っている。
ノアールを連れて、服の仕立屋へ向かうことにした。
ナルシエの町へ来る直前。通り抜けた森で遭遇した魔物が、炎の魔法を使った。それでノアールお気に入りの緑の服の、マントの部分が焦げて穴が開いてしまった。マントを直さないと、緑の服が着られないのだ。
今のノアールは、緩い黒のローブを袖に腕を通さないで羽織っている。左手を出すときには、ローブ正面の合わせ目から出している。
「このローブは、ある魔道士が使っていたもので魔に対する相性が非常にいいのです。傷んでも破れも、魔を吸収すれば直ぐに再生してしまうのです」
と言うことらしい。だから「本気で戦うときには、これを着ます」と言ってる。
いや、裸で戦う方が圧倒的に強いと思うぞ。ノアールは……。
仕立屋には、穴の開いてしまったマントを渡して「同じ作りで」と依頼した。
仕立屋は年配の婦人だが、ノアールを見て「胸のあたりに赤い花弁の刺繍をしよう」といってくれた。




