【片足の騎士】第9話 憂さ晴らし
改めて見てみれば、呪具を持つ男は、皮鎧の3人とは身なりが違った。魔法使いは、自身が魔の影響を受けないように魔封じの呪詛を刻んだ布の服を着る。
短めのマントを羽織っているのは、あれに呪詛を刻んであるのだろう。
「ノアール、呪具は好きにしていいよ」
「はい」
呪具を使う魔法使いはノアールに任せて、わたしは3人の剣使いを片付けよう。
3人の剣使いは、1人が正面に、2人は各々左右に回り込んで、わたしを3方向から囲んだ。
「!」
地面を蹴って、正面の敵との距離を一気に詰める。同時に海賊の剣を横薙ぎに振るった。敵は、両手持ちにしたロングソードで、それを受ける。
ベキン!
ロングソードは、くの字に曲がる。海賊の剣が鈍い音をさせて敵の右腕に食い込む。激痛に蹲った敵の二の腕が、不自然な方向に曲がっていた。
海賊の剣は、刃も切先も鋭くはない。分厚い剣の重さに勢いを乗せて叩きつけ、肉を潰して骨を砕く。
ロングソード如きなら、受けた刃ごと剣士の身体もを砕くことができる。
わたしは、そのまま右方向に向き直り、右へ回り込もうとしていた敵と対峙する。
敵が剣を構え直すより先に、わたしから体当たりでぶつかった。不意打ちが決まって敵が後ろへ蹌踉ける……其奴の左大腿部に海賊の剣を振り下ろす。
……グシャリ
鈍い音がして、骨を砕いた手応えはあった。
「さあて、後はアンタ1人だ」
2人のやられ具合を目の当たりにして、残る1人は怖じ気付いている。
チラチラと魔法使いの方を見て、援護を求める仕草をする。魔法使いが、わたしを狙って火の玉を放つが無視。
ノアールが何とかするはずだ。
不意にガゼル達が逃げた方向で火の手が上がった。身体を揺さぶるような熱い熱風が吹いて、昼間のように明るくなる。
男の声で悲鳴が聞こえた。
「油に火がついたのか?」
1人だけ残った剣使いと呪具を手にする魔法使いは、何が起こったか理解できずにオロオロし始めた。
ノアールは空間を捻って、ガゼル達の方へ火の玉を繋いだのだろう。
それが油を入れた樽に引火したのは、運が良いのか悪いのか?
町の住民が、この火に気付いて集まるだろうから、ガゼルへのお仕置きを急がないと。
剣使いの肋骨数本をへし折って、わたしは油に燃え移った炎に向かう。
ガゼルと2人の護穎は火傷はしているが、まだまだ悪足掻きする元気は持っていた。
3人がかりなら勝てると思ったのか、なかなか勇敢に挑んできた。最初だけ……だが。
護衛2人の手足を、不思議な方向へ曲がるようにしてあげたら、ガゼルはやっと1対1の会話に応じてくれた。




