【片足の騎士】第8話 最初に言っておく
その日の夜半過ぎ。
月明かりの中、町外れにある孤児院に繋がる道を、7人ほどの集団が移動している。各々が剣を携えている上に、油と思われる樽を運ぶ者までいる。
「連中、孤児院に火をかけるつもりだね」
「その日の夜にすぐ行動するなんて、せっかちな方なのですね」
あの手の輩は、面子にだけは敏感だ。恥をかかせられれば、後先の考えなしに感情だけで反応する。
張り込んだ初日に動いてくれたのは、わたし達にとっては手間が省けて有り難い。
「じゃあ、林を抜けて先回りと行こうか」
町の中心街から孤児院に繋がる道で、この場所は林を囲んでU字型になっている。林を突っ切れば、道を進む連中の先回りができる地点だ。
ノアールと2人で林を抜け、道の真ん中に立って7人の人影が現れるのを待つ。程なくして、月明かりの中にそれは現れた。
「お前は……?」
一番先頭には、《《虫唾の走る》》顔がある。そして2人の護衛役。それに続く4人は知らない顔だが、総じて人相は良くない。金で雇った冒険者かならず者だろう。
『昼間に恥をかかされた腹いせに孤児院を襲撃しようとしたら、待ち伏せされていた』
わたしの顔を見知っているガゼルと護衛役2人なら、状況はわかるだろう。他の4人は、顔を見合わせているが無視でいい。
「最初に言っておく。聞きたくもない惚気話を聞かせれて、わたしは気分が悪い」
皆揃って「何を言ってるんだ?」と怪訝な顔をする。構わず、海賊の剣を引き抜いて、その剣先をガゼルをに向けた。
「アンタの選択肢は2つ。一つは、大人しく左足をへし折られること。もう一つは、悪あがきをして、痛い目をみてから左足をへし折られることだ。好きな方を選びな!」
子供たちに「命のやり取りで解決する様を見せたくない」と言う、心優しい騎士様の意向を汲んでの妥協案だ。
「ふざけやがって! やっちまえ!」
ガゼルは、引き連れて来たならず者に指示を出す。そして、ちゃっかりと自分は後ろの方へ引き下がってる。
ふふん、まあいいさ。
「そうしてくれると有り難いね。この気分の悪さ、アンタらで憂さを晴らさせて貰うよ」
敵が7人いたところで、それが全部正面にいるなら問題ない。ガゼルと護衛2人は後ろに逃げたから、実質4人を相手にするだけだ。
4人のうち3人が腰の剣を抜く。残る1人は、大人の腕くらいの筒を取り出した。
(……あれは?)
筒の先をわたしに向けて、中腰でそれを支える。筒の先が光って、わたしの足元近くに火柱が立った。
(呪具まで用意してきてたのか)
火の玉を撃ち出す呪具……魔法使いも連れてくるとは。




