【片足の騎士】第7話 惚気話
「2人とも、ここで育ったのかい?」
「はい。わたしは7歳、ライセンは9歳のときに戦争で両親が亡くなりました。家も戦火に焼かれてしまい住む場所もなくなりました。それで院長様が、ここへ住まわせてくれたのです」
院長……と言うのは、3年前に病で亡くなった前の修道院長のことだ。
「今思うと、院長様はその頃から身体を悪くされていたのでしょう。それで、ここを孤児院にして、残りの人生をわたし達のような子供に捧げてくれた気がします」
ガゼルのような『虫唾の走る』人間がいる一方で、立派な人間もいる。人の世は妙なバランスが、成り立ってしまっているらしい。
「その院長の意志を継いでいるんだから、2人も立派だよ」
「いえ、自分は早くに孤児院を飛び出してしまったので、院長やラムンの苦労はあまり知らなかったんですよ」
ライセンは、戦士になると言ってここを飛び出したと言うが……先ほどの身のこなしといい、どこかで相当な鍛錬を積んだはずだ。
「今は子供達に、文字の読み書きを教えてくれているんです。男の子からは、剣を教えて欲しいとせがまれても、読み書きの後だと言い聞かせています」
アルファベットの文字を彫り込んだ木の板は、ライセンの手作りで子供達の人数分を作ったそうだ。
昼食の後で、ラムンは子供達を連れてまた畑に出て行った。子供達は、その後ライセンから夕食まで文字を教わる。
小さな修道院でも、大人2人と子供5人にはかなりの部屋が余っている。今は、建物の大部分が物置になっている。
ノアールと部屋に戻る途中、乱暴に武具や防具が投げ込まれているのが目に入った。鎖帷子と、その上に羽織るサーコートもある。
埃をかぶったサーコートには豪華な刺繍が施されており、バーガムディ公の紋章が描かれていた。
「これは、バーガムディ公直属の騎士に与えられたサーコート?」
ライセンは、単なる兵士ではなく、騎士にまで取り立てられていたのか。
「昔のことです」
いつの間にか、ライセンが後ろに立っていた。
「騎士にまで登り詰めたのなら……片足を失っても、公領の役職を貰うこともできたんじゃないのかい?」
「自分は、ラムンを守りたくて戦っていたんです。この地に敵の軍勢を近づけさせないため、二度とこの地を戦火に焼かせないために……」
ライセンは照れくさそうに笑う。だが、きっぱりと言い切った。
「今は戦えなくなリましたが、ラムンを守りたい気持ちは変わっていません。今の自分のできることで、ラムンを手伝いたいと思っています」




