【片足の騎士】第6話 虫唾の走る男
3人組がいなくなって、改めてラムンから片足の男を紹介された。
名前はライセン。この町の……と言うよりも、前修道院長に拾われた孤児で、ここの出身。ラムンとは幼馴染みで、今は2人で孤児5人の面倒を見ているそうだ。
元修道院の建物なので、食堂がある。普段は、ラムンとライセン、そして孤児5人は揃って食堂で食事をしている。
昼食だからと、わたしとノアールも食堂に呼ばれた。できればノアールを人前に出したくないのだが、強硬に断っても不自然なので行くことにした。
お客が珍しいのか……子供達は、わたしとノアールに興味しんしんと言う感じだった。
「悪い奴を、パンチ一発でやっつけたんだ」
「ライセンとどっちが強いの?」
「すごく大きな剣を振っていたよね」
「黒いお姉ちゃんも力持ちだよ」
「片手で水一杯の桶を軽々持ってたわ」
お陰様で、子供達には好印象で迎えて貰えた。ノアールが右手を隠していると、「怪我をしているんですか?」と年長の女の子が気に掛けてくれ、ノアールの分の黒パンを小さめに切ってくれた。折角の好意なので、ノアールには「少し食べる」ように言っておく。
子供からも「悪い奴」と呼ばれたガゼルだが、3ヶ月前からこのナルシエの町に居着いたと言う。直ぐに女癖の悪さが評判になったが、領主の子息と言うことで住民は逆らえない。
それがラムンに眼をつけたと言う。
「私は修道女ですから、殿方とは親しい関係にはなれません。ですが、いつの間にか破門されてしまったのです」
「いつの間にか……?」
「ここはナルシエの町の教会が管理する修道院でした。教会の司祭様に圧力をかけて、私の破門を取り付けたようなのです」
破門されれば、一応俗世の女だ。口説いていい相手と言うわけか。
「それで……ガゼル様は、私に愛人になれとしつこく付きまとうのです」
「愛人……ガゼル殿は独身のはずだが?」
「いえ、私もここで育った孤児の1人なのです。孤児風情が領主の子息の正妻にはなれません」
思わず、ため息をついてノアールを見た。ノアールが、襲われた際に奴らを引き裂いていたら万事解決していた気がする。
「私は昨日たまたま外出したのですが、その留守にガゼル様は孤児院に現れたそうです。もしライセンがいなかったら、この子がどうなっていたか……」
ラムンの視線の先は、ノアールのパンを切ってくれた年長の女の子がいた。ガゼルは、こんな娘にまで手を出そうとしたのか?
いや、初潮前の小娘じゃないか。
この娘を庇うために、ライセンが昨日は3人組から袋叩きにされていたんだな。




