【片足の騎士】第4話 赤毛の男
「ラゲルナ様、あれを」
窓の外で、畑作業をしているラムンと子供たち。ノアールの左手が指さす先を見て、わたしも気色ばむ。
赤毛の髪の若い男が、ズカズカと畑の中へ押し入っていた。ラムンと子供たちが植えた苗を、一切気遣うことなく畑の中を歩いてラムンに近づこうとしている。
あれは昨日、義足の男に乱暴を働いていた3人組の1人だ。いや、後ろの方に他の2人もいる。
「妾を襲おうとした者たちです」
やはり、同じ連中だったか。
赤毛の男を、子供たちは険しい顔で見る。年端のいかない幼い子は、脅えて肩を振るわせている。それでも、ラムンを赤毛の男から守るかのように彼女の前で壁を作るように立っていた。
「わたしが行くよ。ノアールは、ここで待ってな」
「はい」
赤毛の男は、剣を持っていないようだから海賊の剣は置いて行く。まあ、何かしらの武器を隠し持っていてもあのレベルの連中なら素手で十分だ。
部屋は1階だから、その窓から飛び降りて裏庭の畑へ向かう。
革鎧姿のわたしが近づいてきたことに気付いた3人組は、警戒の色を示す。剣を携えている後ろの2人は、わたしと赤毛の男との間に立って進路を塞いだ。
(こいつら2人は、護衛役か?)
赤毛の男も、わたしの方を向いた。上等な生地に豪華な刺繍が施された服……その服に描かれた紋章には見覚えがある。
(ガルディバ伯の紋章か)
そうか……ナルシエの町は、ガルディバ伯の所領だったな。
わたしが仕えていたレイドリク伯と同様に、ガルディバ伯もバーガムディ公を主とする小領主だ。特に武勇で秀でたレイドリク伯と比べたら、失礼な言い方だが、地味な辺境伯と言う感じだろう。
その、地味な辺境伯を有名にしているのが、ガルディバ伯の3番目の男子。
長男は跡継ぎ、次男は僧侶、三男は軍人……と言う習わしにあって、軍務を任せられない放蕩息子は有名だ。
「ガルディバ伯の三男であらせられるガゼル殿とお見受けします」
赤毛の男……ガゼル・ドゥ・ガルディバは、片膝をついて挨拶したわたしを見てニタリと笑った。後ろの2人も顔を見合わせてほくそ笑んでいる。
しかし……わたしは直ぐに立ち上げって、ガゼルを見据えた。
「子供たちが怯えているので、お引き取り願いたい。もし、女や子供相手に手荒なことをなさるつもりなら、こちらも同様な手段を取らせて頂く」
わたしの口上に、ガゼルの顔が怒りと苛立ちに歪む。護衛の2人は即座に剣を抜いた。
「ほう?」
領主の子息だからと遠慮する必要はない。
実は、ガゼルには、ガルディバ伯の主であるバーガムディ公から懸賞金が掛けられているのだ。




