【精霊】第20話 そして、東へ
翌朝。
村長と自警団の2人が立ち会いのもと、カイルを除く4人の冒険者によって封印が施された。魔物が何の抵抗もなく封印されてしまったことに、4人の冒険者は拍子抜けしている。
村人の『封印されて欲しい』と言う願いが届いたのかも知れない。
「妾もそう思うことにします」
ノアールも、わたしの思いに同意してくれた。
女神像は、封印の呪詛を刻まれた布に包まれて鉄の箱に入れられる。この箱は、暫くの間は村長が預かるが、この場所に教会を建てて安置するつもりだとか。
「教会ねぇ……異教の神への信仰の場所でも、いいのかね?」
「さあ? 気に入らなければ、お姉さまのことですからきっと暴れ出すでしょう」
ノアールはケラケラと笑っている。どんな神を信仰しようと、深刻な問題ではないのかも知れない。土地が変われば、神々の呼び方も変わる……その程度のことなのだろう。
一通りのことが終わると、ケビンがわたし達のところへ歩いて来た。
「飯屋の1階を借り切ってある。祝勝会と言えるほどスッキリとした終わり方ではなかったが、軽い打ち上げ会だ。カイルに準備をさせているから、ぜひとも参加してくれ」
カイルがいては精霊が暴れるかも知れないからと、連れて来なかった。それは正しい判断だったと思う。
そしてケビンは、わたしに右手を差し出した。
「世話になったな」
わたしの肺から小さくため息が漏れた。それから、右の拳でケビンの左頬を殴り飛ばす。手加減はしてないから、ケビンの身体は大きく吹っ飛んだ。
「北の地で、人を騙すのは死刑でしか贖えない重罪なんだよ。生かしておくだけ有り難いと思いな」
近道を案内する……と偽って魔物討伐の仕事に巻き込まれた件を、わたしは忘れていない。やっと仕返しができた。
封印を見届けて、わたしとノアールは今度こそ東を目指す旅に出た。冒険者たちの打ち上げ会とやらはすっぽかした。
「ラゲルナ様。嫁とは、何なのですか?」
ケビンが、わたしに「カイルの嫁に」と言った件だろうか。「嫁」と言う言葉に興味を持ったらしい。
「一緒に暮らして、身の回りの世話をしたりする相棒みたいな存在だね」
「まあ。それなら、ラゲルナ様は妾の嫁ではありませんか!」
え? いや、男が旦那で女が嫁で……と言う説明をする前にノアールが怒り出してしまう。
「許せません! あの方は、妾から嫁であるラゲルナ様を奪おうとしたのですね。今度遭ったら、八つ裂きにしてやります」
ノアールの言葉に冗談はない。もし、あの冒険者たちと再び遭うことあったら、彼らの命はないだろうな。
Ep 精霊 -終-




