【精霊】第18話 三つの選択肢
村長の話に区切りがついたので、気にかかっていることを尋ねてみた。
「魔物に殺された人たちのことだけどさ。素行の方は、どうだったの?」
「うん?」
ケビンは「それが何なんだ?」と言う顔をする。村長は、小さくため息をついて首をゆっくりと横に振った。
あまり褒められたものではなかったらしいな。
新しい街道が整備されて、このラサンティスの村を訪れる人が急激に増えた。そして、当然ながら集まるのは善人ばかりではない。
魔物に殺された者たちは可哀想ではあるが、善人だったわけではない。
「相場を知らない村人から安く買い叩いて土地を巻き上げようとした者、人買い商人と繋がって村娘を連れ出そうとした者、ゼークト公領の権威をかさに村人に狼藉を働く兵士たち……評判の悪い者ばかりでした」
「……」
被害者が揃って悪人ばかりだったと聞いて、冒険者たちはバツが悪そうに顔を見合わせる。そう言う連中のお仲間が、この仕事の依頼人である。
「いや、ちょっと待て。オレも襲われたんだぞ!」
カイルが抗議の声を上げた。しかし。
「村長のところから娘さんを連れ出そうとしたからな」
「飯屋の女将さんが病気だと聞いた途端に、見舞いと称して部屋に押し入ろうとした。あれでは強盗だ」
カイルのおかげで、わたしの仮説に裏付けが取れてしまう。馬鹿にも使いようがあるものだ。
「それで、状況が何か変わるのか?」
ケビンは、怪訝な顔をわたしに向ける。
「何も変わらないさ。ただね、生贄の魂は魔物になったのではなく、村を護る精霊になったんだと村人に憶えておいて欲しいのさ」
「ふん。盾の乙女がそんなロマンティストとは思わなかったぞ」
ケビンは、感傷で話の腰を折られたのが不満気な様子だった。
生憎だけど、死者の魂のやすらぎを祈るのが盾の乙女の本当の役目なんだよ。
ケビンも「魔物を退治するのは不可能」と結論した。それならばと、対策として3つの選択肢をまとまる。
一つ。魔物はこのままにして、魔物が活動する森への立ち入りを禁止する。
二つ。魔物の依代と思われる女神像を破壊する。
三つ。魔物を封印する。
悪人しか襲われていないとしても、魔物を野放しにして良い理由にはならない。一つ目の選択肢は有り得ない。
ケビンとしては、二つ目の選択肢を望んでいた。冒険者として「魔物征伐」をアピールできる結末だ。
しかし、魔物の力が別の依代に憑依する可能性を指摘されて、ケビンも考え込んでしまった。結局のところ、魔の力を放置せず、何とかして封じる術が必要になる。
選択肢の「三つ目」で模索するしかなくなった。




