【精霊】第17話 生贄の儀式
村長の家に戻ると、5人の冒険者は揃っていた。カイルの傍に、ケビンの弟子のゾロがいて包帯を巻いている。
わたしとノアールが中に入ると、ルイスとアーレンが椅子をすすめてくれた。有難いとは思ったが「仕事を手伝う」つもりはないからと遠慮した。わたしとノアールは、昨日と同じく扉近くの壁で立つことにする。
すると、何故かカイルがゾロを押しのけて、わたし達のところへ歩いて来た。
「ラゲルナ、心配させてしまったな。オレは、この通り大丈夫だ」
非常に残念だ。頭を打って、その馬鹿が少しでも治れば良かったのに。
「魔法使いよ、オレの危機を教えてくれてありがとう。この借りは必ず返す。そうだ、その黒い髪に似合う髪飾りを贈ろう。モルガルの街には腕の良い細工師がいるのだ。オレと共にモルガルの街へ……」
そのパターンは、朝方に村長の娘さんを口説くときに使っているぞ。
森で魔物に肩を掴まれる直前の、ノアールの視線に気付ていたのか。なるほど、それでやたら反応が早かったのだな。
「カイルさん、まだ治療の途中です」
ゾロが、カイルを呼びに来た。ゾロから漂う薬草の匂いで、打撲に効く薬を調合していたのがわかる。
ノアールが魔物にも女神像にも食指を示さないのだから、本当なら村に戻らずにそのまま旅に出てしまえば良かった。しかし、一つだけ気になることがある。
戻ってきたのは、それを確かめるためだ。
わたしとノアールの到着を待っていたのか、それから直ぐに村長とケビンが話を始める。ケビンも、魔物の顔が女神像に似ていることに気付いていた。
それから、村長から村の古い神事の話を聞かされる。
大昔には、生贄を捧げる儀式が村にあったと言う。
生贄には「森の守護神への花嫁」の意味があったので若い娘が選ばれた。生贄となった娘たちを供養する意味で、女性を模った神像が造られることになる。
時代が流れて、生贄の風習は捨て去られた。神殿だった場所も壊れて、再建されることもなかった。神像だけが残り、神々の加護を受けた森は「女神の森」と呼ばれるようになる。
「戦争で敵の領主の大軍が森の向こう側で陣を張りましたが、精霊の加護に護られた『女神の森』をただ一人の兵も抜けられなかったそうです。領主の軍は、森と村を迂回して進むしかなかったと言われています」
他にも「村を襲った野盗が森に逃げ込んだ後に酷たらしい死体で発見された」とか、事実とも御伽話ともわからない逸話をいくつか聞かせられる。
しかし、あの精霊が具現化していたら……十分有り得るだろうな。




