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異形の美女に懐かれたので、旅の道連れとなって冒険者します  作者: 星羽昴
Ep:精霊

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【精霊】第15話 お腹が空きました

 わたしを含めて、その場にいた者のほとんどが、暫しの間、女の顔の魔物が消えた空を眺めていた。空を見ていなかったのは、うつ伏せで呻き声を漏らしているカイルだけだ。


「カイル、大丈夫か?」


 我を取り戻した冒険者たちが、カイルのところへ駆け寄る。抱き起こされたカイルが、わたしの方を見て親指を立てた右拳を上げた。

 ……いや、わたしは心配していないから。

 ケビンが軽くカイルの頭を叩いて、わたし達を見た。


「正直な話、何をどうやったのかはわからんが……そっちの魔法使いは、凄いな。あの魔物と互角にやり合ったんだ」


 カイルの無事を確認したケビンが、わたしとノアールの方へ歩いて来る。ノアールもかなり疲れているようで、膝をついたまま動かない。

 わたしはケビンに近づいて欲しくなかった。


「カイルを連れて早く帰りな。わたしは、この娘を休ませてから行くから」


「……あ、ああ」


 わたしの殺気めいた圧を察したのか、ケビンはそれ以上近づいてこなかった。魔物に向かって投げつけた海賊の剣(ヴァイキングソード)を、その場に置いて立ち去る。


「村長の家で待っている」


 それだけ言い残すと、カイルを抱えて帰路につく冒険者たちの後を追っていった。



 冒険者たちがいなくなり、周囲に人の気配がなくなった。


「さすがに、お腹が空きました」


 笑顔に戻ったノアールは、右半身を覆うマントを止める紐をほどいた。そして左手で腰のくびれ部の紐もほどいてスカートの左半分を外した。

 ずり落ちたマントの下から猛禽類の如き鉤爪の右手、露わになった左脚からは蛇の頭が鎌首をもたげる。


「ノアールの食べられそうなモノが、あるかい?」


 あの、女の顔をした魔物以外には、この森には魔物のいる様子はない。


「お姉さまが置いていった翼と腕を貰います」


 ノアールは、膝をついたまま四つん這いで空間と共に引き千切った白い翼のところへ身体を運ぶ。あの魔物は向かい合っているだけで、立ち上がって歩けないほどノアールを消耗させたらしい。

 ノアールの口が耳元まで裂けて、びっしりと牙が並ぶ赤い口を大きく開いた。

 白い翼にかぶり付いて、バリバリと音を立てながらの貪り喰らうノアール。左脚の蛇の頭を持つ触手も伸びて、一緒に白い翼を貪っている。

 白い翼が、黒い砂になって風に流れていった。



 魔物の残した翼と腕を喰らい終わったノアールは、ゆっくりと立ち上がった。

 ちなみに、外したマントとスカートの左半分を留め直して、ノアールの服装を整えるのはわたしの役目になっている。

 右手が鉤爪のノアールには留め紐が結べないから。

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