【冒険者の矜持】第4話 迷惑料?
魔物使いにも2つの型がある。人や獣を依代にして自然に生じる魔物を手なずけて使役する者、呪符で魔物を具現化させて操る者。
呪符で具現化した魔物は「大した力はない」と言われる。魔を吸収できないから一定の時間が経過すれば消えてしまう。その代わり、呪符に刻んだ命令を忠実に実行する。
子供が呼び出した魔蟲は、わたしを攻撃するように操られているのだろう。2匹の魔蟲は、わたしの周囲を飛び回り体当たりを仕掛けてくる。そして、わたしの《《体勢の崩れ》》を見計らうように、男がショートソードを打ち込んでくる。
なかなか面倒な真似をしてくれる。
靴を履いてないから、川辺の石が足の裏に当たって痛い。何より、裸の肌に蟲が触れたら気色悪い。毒を持っているかも知れないし。
2匹の魔蟲が、不意に空高くに飛び上がった。
「!」
男の顔で口角が上がり、卑下た笑いが浮かぶ。視線はノアールの方へ向いている。
「ノアール、気をつけな!」
ノアールの背後に、人の大きさ程の《《蠍に似た魔蟲》》が現れた。そして、空高く飛び上がった2匹の魔蟲も、そこからノアール目がけて一直線に襲いかかる。
……呼びかける必要なんてなかった。
ノアールの背中に見える景色が横にズレて見えると同時に、鈍い音を立てて蠍の魔蟲は真っ二つになっていた。空から襲ってくる2匹の魔蟲も同じように斬り裂かれて、空中で黒い砂になり風に流されてしまう。
空間を、魔蟲ごと引き千切ったのだ。
呆気にとられたのか、男のショートソードが数瞬止まる。その隙に剣を叩き墜として、男の身体を組み伏せるのは造作もない。
「ソラン! ソーマ!」
男を組み伏せて、その喉元に海賊の剣を突き付けているところへ、別の冒険者風の男が現れた。また、斬り合うのかと身構えたが、新たに現れた男は敵意を示さなかった。
わたしが裸だと気付くと、自分のマントを手渡して横を向く。
受け取ったマントを羽織って、隠すべきところを隠した。
「この2人が、何かしましたか?」
どうした?……ではなくて「何かしたか?」を問うてくるのは、普段から行動に問題がある連中と言うことか。
「水浴びをしてたら、荷物を盗まれそうになってね。弟を庇うつもりだったのかは知らないけど、斬り掛かってきたから《《こう》》したよ」
簡単に事情を説明すると、マルゼネスと名乗った冒険者は「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
「行動には気をつけてくれ。今、問題を起こされたら、俺のパーティの評判に関わるんだからな」
迷惑料のつもりか銀貨数枚を握らされ、3人の背中を見送ることになる。




