【冒険者の矜持】第3話 魔蟲使い
同じ剣使いでも、冒険者の装備は独特だ。個人や、せいぜい数人のパーティで活動するためか剣や鎧に自己主張の強い意匠を凝らしている。
この男の革鎧も、手の込んだ装飾が取り付けられている。
「わたし達の荷物を盗もうとしたのは、そっちの弟だよ。ちゃんと躾けておいて欲しいんだけどね」
「ソーマは、お前たちを魔物だと言ってる。魔物なら、この場で俺が片付けてやるぜ!」
ソーマと言うのが弟の名前か?
ノアールには黒のローブを羽織らせたが、わたしの方はまだ裸のままだ。荷物を盗まれそうになって、更に魔物と言われて、裸で斬り合いさせられるとは何の罰ゲームだよ。
……と思っている間に、男は一機に踏み込んできてロングソードを突き出してくる。
「!」
海賊の剣の鍔元で、突き出される剣先を弾く。かなり鋭い、手加減を一切していない斬撃だった。
「ほう、少しはやるな」
男はニヤリと不敵な笑みを浮かべて、再び腰を落としてロングソードを構え直した。
……今の斬撃は、本気でわたしを殺しにきていたな。
「ふうん。そう言うつもりかい」
冒険者と言っても様々だ。中には、冒険者の身分を隠れ簑にして闇ルートの運び屋をする者、野盗紛いの強盗をしている者もいる。
この男が、そう言う輩か、それとも単に「弟に過保護すぎる」だけの馬鹿兄貴か。
「ラゲルナ様、妾が……」
裸で戦うわたしを気遣って、ノアールが交代を申し出てくれた。
「いや。正義の味方ってのはね、相手が1人ならあくまで一対一で戦うものなんだよ」
「まあ、そうなんですね」
驚きながらも納得してしまうノアール。
生まれてこの方、正義の味方をやったことなんてないのだが、この男の弟にお灸を据えたのはわたしだ。仕方がないから、付き合うことにする。
この男……剣使いとしての腕はなかなかだが、それでもわたしの敵ではない。
太刀筋を読んで、突き出したロングソードに海賊の剣を振り下ろせば、あっさりロングソードはへし折れた。
男の顔色が変わって、慌てて身体を退く。
少しは落ち着いて話ができるかと思ったが、そうはいかなかった。
男は腰の後ろか予備のショートソードを引き抜くと、弟の方に何かの合図を送った。弟が腰に下げた小箱を開けて、目の前に掲げるとそこから白い靄が立ち上り、二条の帯になって上に伸びる。
二条の帯は蟲の形に実体化して、わたしを左右から襲ってくる。
「これは……魔蟲か?」
特殊な呪符に魔を集め、魔物を具現化させる……具現化した魔物は、術者の意のままに操られる。
あの子供は、魔物使いだったのか。




