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異形の美女に懐かれたので、旅の道連れとなって冒険者します  作者: 星羽昴
Ep:迷宮

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【迷宮】第27話 奇妙な感覚

 6人の冒険者は西(むね)の扉から飛び出ると、中庭に繋いである馬の元へ走っていた。

 オォォォォォーーーン

 魔牛ミノタウロスの、甲高い雄叫びを聞いた冒険者たちの動きが止まる。そこに、ノアールの投げた海賊の剣(ヴァイキングソード)が転がった。



 放り投げられた鉄の剣を追いかけて、魔牛ミノタウロスは中庭を走り出す。自分達目がけて駆け寄ってくる魔牛ミノタウロスに気付いた冒険者たちは、一瞬で血の気が引いただろう。

 しかし、彼らは魔牛ミノタウロスを怖れる必要はなかった。

 ……バチン

 次の瞬間、何かが弾ける音と共に中庭の景色が横にズレる。ノアールが、中庭の空間を捻って引き裂いたのだ。6人の冒険者たちの身体は、胸や胴の辺りで横に切断された。

 ……ドスン……ゴトッ……ビチャ

 赤い鮮血が中庭の地面に広がる。切断された上半身が、湿った音と共に血の海に転げ落ちた。

 切断されたのは、冒険者たちだけではなかった。

 オォォォォン

 オォォォォン

 魔牛ミノタウロスの悲鳴も中庭に響き渡った。冒険者の胴体の高さで引き千切られ空間は、魔牛ミノタウロスの脚を膝の上辺りで切断していた。

 両脚を失って、中庭の地面に突っ伏した魔牛ミノタウロスが苦しみ藻掻いているのだ。魔牛ミノタウロスは、両腕で這いつくばりながらも前方に転がっている鉄の剣を目指して身体を引きずっていた。



 ノアールはゆっくりと魔牛ミノタウロスに向かって歩いて行った。射干玉ぬばたまの如き黒髪を靡かせる後ろ姿は美しい。一糸纏わぬ白い肌は、ダイヤモンドダストの光に包まれなくとも輝いているように見える。

 右手の肘を僅かに曲げて、鉤爪の調子を探るように動かしていた。左脚の蛇の頭を持つ触手は、ノアールの頭のもっと上まで伸びて魔牛ミノタウロスに視線を向けている。



 わたしは、奇妙な感覚を覚えていた。

 魔牛ミノタウロスは、前方の《《鉄の剣》》を目指して、必死に身体を引きずり藻掻いている。《《強敵》》が、その背後から迫っているに。

 魔と鉄は相性が悪い。

 脆弱な魔物なら、鉄に触れるだけで消滅してしまう。逆に強力な魔物であれば、触れた鉄に魔力を流し込んで、鉄の方を砕いてしまうモノもいる。

 わたしも、これまでノアールと一緒に魔狼ワーウルフ魔牛ミノタウロスと遭遇してきた。魔狼ワーウルフ魔牛ミノタウロスは強力な魔物だ。しかし、それらの魔物は、鉄の剣を持つわたしより、遙かに強力なノアールを標的にしてきた。いや、それが当たり前の反応だ。

 魔物を『生き物』するのは矛盾するかも知れないが、より強力な敵を優先的に排除しようとするのが《《本能》》のはずだ。



 魔牛ミノタウロスは、空間を引き千切る巻き添えになった馬の屍に向かって、その巨大な腕を何度も何度も振り下ろしていた。おそらく馬の蹄に付いた蹄鉄ていてつを攻撃しているのだろう。

 最早、武器ですらないのに……。

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