【迷宮】第24話 炎吐く魔牛
ドーゼの冒険者でリーダー格の男は、ラグドールとオルティナを伴って祭壇の中央へ向かった。その他の5人は、礼拝堂に散らばって魔牛が現れるのを警戒する。
「それは鉄の剣だよな」
冒険者の1人が、わたしに問うてきた。今時、鉄以外の剣を使う者がいるとは思えない。変な質問と思いつつも「ああ、そうだよ」と答えた。
「仲間だった魔法使いが言っていたのだが、魔物は鉄を嫌うらしい。鉄の剣を持っているなら、我々と一緒に警戒に回ってくれ」
ああ、そう言うことか。わたしもノアールを連れて、礼拝堂の端の方を警戒する。
「蓋を開けても中にあるのは、連中が期待するような金銀財宝や太古の呪具ではないだろう。せいぜい当時の記録を文字で残した粘土板か銅板だろうよ」
ラグドールはそう言っていた。ラグドールにとっては、それがお宝であり、それでドーゼの冒険者は諦めるだろうから、荷物を運ばせながら帰り道を探すつもりらしい。
礼拝堂の祭壇があった場所と、わたしが立つ端の方は少し離れている。ラグドールやオルティナの姿は、小さく見えていたのだが、それでもオルティナが慌ててこちらを振り返ったのがわかった。
「来るよ! 気をつけな!」
オルティナが叫ぶ。ノアールも、わたしの背中にピッタリと張り付いていた。ノアールの視線は斜め上を見つめている。その視線の先に、白い靄が渦を巻き始めた。
「……本当にデカいね」
白い靄は、渦を巻きながら人の形になり……頭に2本の角を持つ魔物の姿になった。確かに、大人二人分の背丈はある、牛の顔をした魔物だった。
オォォォォォーーーン
わたしの知っている魔牛と違い、甲高い鳴き声を《《それ》》は上げた。少し形態が違うから、亜種のようなものかも知れない。
魔牛をノアールに任せるつもりで、わたしは後ろに下がろうとした。しかし、そのわたしに向かって魔牛は、口から炎を吐いたのだ。
「ええ!?」
ノアールがわたしを抱きかかえて跳躍してくれたおかげで、ギリギリで炎を躱せた。
「牛さん。貴男の相手は、妾がしますよ」
魔牛と向かい合い、距離を詰めるノアール。しかし、どう言うわけか魔牛の視線は、わたしの方にしか向かない。
「ラゲルナ様!」
駆け寄ってきたノアールは、わたしを抱きあげる。魔牛は、わたし達……いや、わたしに向かって走り出す。
わたしはノアールに『お姫様だっこ』されたまま移動する。
「ラグドール!」
オルティナの絶叫が聞こえた。
ラグドールが頭から血を流して横たわっている。リーダー格の男の手には、血の付いた瓦礫が握られていた。




