【迷宮】第22話 生存者
転移した先は、新たな場所だった。太く四角い柱が立ち並ぶ広大なホールである。
立ち並んでいる柱には彫刻が刻まれて、その奥には祭壇らしきものの残骸がある。
「これは驚いたな。石壁だけの牢獄のような場所に出るかと思っていたが……」
予想を裏切られたらしいラグドールだが、既に祭壇の残骸に興味を移してる。新しい羊皮紙を取り出して、その様子を画にしている。
礼拝堂のようなものだったのかも知れない。広い中央通路には、3人の冒険者らしい者が横たわって動かない。おそらく既に命を落としているだろう。
「おい、何をしてる! こっちへ来い!」
不意に声を掛けられた。反射的に右手が海賊の剣の柄を握る。
「早くしろ! 急げ!」
声に、焦りと苛立ちが籠もっている。祭壇の瓦礫に身体を隠しながら、革鎧の男がわたし達を手招きしていた。
瓦礫の先は、小屋のようになっていた。祭壇に並べる祭具を納める倉庫か何かだったのだろう。
そこには6人の冒険者がいた。みな、顔に疲労が浮き出ている。やたらと瞬きが多く、目の下にクマができているのは眠っていないのかも知れない。
「何か、食い物はないか?」
え?……と思ったが、この連中は中庭に戻って野営するつもりだったのを、迷宮に閉じ込められて出られなくなったはずだ。昨日の夜から何も食べていないのか。
オルティナの背負っていた荷物袋から黒パンを見せる。ラグドールは《《しっかり》》と「知っていることを話せ」と交換条件を出した。
さすがに年の功……抜け目がない。
この城へ来たドーゼの冒険者は14人。西と東の棟に5人の死体があって、この礼拝堂にも3人の死体があったから、この6人で全員と言うことになる。
4人を外で野営の準備に残して、10人で城へ侵入したが……転移の迷宮に閉じ込められて出られなくなった。10人の帰りが遅いからと、中を覗いた4人も迷宮に捉えられてしまったとのこと。
生存者6人のうちの2人は、外で待っているはずの役割だった。
「それで……魔牛がいたんだな?」
「ああ、そうだ。それも……馬鹿デカい奴だ」
魔牛は強力な魔物だが、大人より頭一つか二つ大きい程度の大きさのはず。しかし、この迷宮で彼らが遭遇したのは大人二人分の背丈を超える魔牛だったと言う。
「驚いて《《そう見えた》》だけではないのか?」
「違う! いいか、あの窓の高さに頭があったんだぞ!」
生き残った冒険者は、礼拝堂の扉の上にある窓を指差した。今は外から封じられているが、この礼拝堂の2階部分には窓が設けられている。
「2階の窓を覗ける大きさの魔牛だと……?」




