【迷宮】第21話 迷宮の奥へ
作製された転移の地図に従い、西棟の先端部にある塔を目指す。ラグドールの分析は的確で、何度かの転移の後で予定通りに目的の塔へ辿り着けた。
「この塔には2階への出口はなかったね」
わたし達4人は塔の最上部まで登り切り、胸壁越しに城を一望した。太陽は南から僅かに西へ傾いた頃だった。
ドーゼの冒険者たちの馬は、中庭で石の隙間から生えた草を食んでいる。綱で止められているから逃げられない。
わたし達が、城を去るときには綱を切ってやろう。
城の外へ出たオルティナは、周囲の気配を探っているようだ。
ノアールがキョロキョロしている……と思ったが、違った。
わたしの顔と西面の中央部を交互に見ているのだ。わたしの顔を見るときには、上目遣いで《《何か》》を訴えている。
……早く食事をさせろ、と言いたいのだろう。
あの、入り口を封じた石壁をぶち壊せば直ぐに中には入れるのだ。そうしたくてウズウズしているに違いない。
「あの石壁を壊すと、お気に入りの服が埃で汚れるよ」
ノアールはハッとする。いや、当たり前なのだが……未だに服を着ることに慣れていないのだろうか?
「やっぱり、あそこだね。まだ何人かは生きているよ」
オルティナが右手を伸ばして、北面の石壁を指差さした。魔物の気配は読めないが、人の気配は何とか捉えられたようだ。
それから東棟の先端部の塔へ向かったが、そこにも2階への出口はなかった。
城の北東部にある塔……東棟と北棟の繋がった所にある塔で2階の廊下へ出る扉が見つかった。いや、廊下と言うより露台と言うべきだろう。何処にも繋がらず、床が人の身長くらいの長さだけ扉から突き出ている。
「ここを進めば、2階部分の魔法陣の流れを横切ることになる。おそらく未知の場所に転移することになるだろう」
扉を出る前に、わたしとノアールを振り返ったラグドールが最後の念押しをする。
「今更だが……君たち2人は、ここで引き返しても構わない。作製した地図を複写したものを渡しておく。これで、ここから帰るのも自由だ」
「いや、こちらにも都合があるんだ。先に進ませて貰うよ」
わたしの返事にラグドールが小さく微笑んだ。
わたしの場合は、ノアールに魔牛を喰らわせないとならないのだ。帰れと言われたら、それこそ壁をぶち壊すことになるだろう。
ラグドールの身体にオルティナが寄り添って、先に扉を出る。数歩進んだところで2人の姿が、わたしとノアールの目の前で消えた。
「行くよ」
「はい」
そして、わたしもノアールの肩を抱いて2人の後に続いた。




