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カッペが遂に大都市東京を走る?  作者: カビゴンと一緒


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ひとりおやかた?

見覚えの在る人

 本日の乗務を終了し飯田橋ウイングへ向かい長く連れ添ったVT-Zを返納、その足で地下鉄メトロ東西線に乗り南砂町へ回る。


 矢部先輩の自宅に立寄りRZ125を引き受ける、キーを受取りシリンダーをONに回す、ニュートラルのグリーンとオイル警告のレッドが灯る。


 眼前に映る景色に不思議な感覚に囚われる、少し広いハンドル幅、太腿に当たるタンクに身体が感じるのは確かに別の車両。

 だが眼に飛び込むメーターとキーシリンダーの風景は上京して以来見慣れた物と同じ…。


 初めての車両と触れる緊張の一瞬、今回は特に感慨深い物が在る、先輩のCBXと此のRZを見ていなけりゃ俺は此処東京に居ない。

 ペダルを起こし踏み抜く、此処でハッキリ解る別の車両(バイク)だと、踏み抜くストロークの短さとペダルに掛かる重さは明らかにチビとは違う、だが同じ系統(血筋)で在る事を匂わせる野太い音。


 左手を掲げ矢部先輩に別れを告げ自宅へ走り出す…、走り出し直ぐに大量の情報が身体に伝わる、其の情報量に安心した。此奴は型落ちで走行距離もかなり多いが絶好調だと言っている。

 応える様にスロットルを開けるとパワーバンドに直ぐに飛び込み強烈な加速を始め市街地は流して様子見、都境の河を越え通勤路を外れて遠廻り、一寸したワイディングが在る市川大野方面へ、パンパンッとシフトダウンとブレーキングしコースイン。


 コーナリングを始め不安が襲う、


[此奴何処までバンク出来るんだよ!]

深くバンクしても全く安定性を失なわず限界が見えない、此奴RZはもっと余裕で行けると言ってる…。

(@_@;)ホントかよ…


[究極のコーナリングマシン!]と言われる訳だ、パワーバンドをキープする腕が有るライダーには魅力的過ぎる。



「ただいま」

「お帰りなさい!」

 聴き慣れた何時もの声が聞こえる。シフトは明日明後日と連休に成り、次の出社日はΓに乗り本社へ向かう、そこから契約社員一人親方としての乗務がスタート、乗務後は電車で帰りΓは本社で留守番、一寸機嫌が心配だが毎日乗って挙げれば多分大丈夫だ。


 冷え込む夜だが掃き出しの窓を開ける、此の眼の前の景色は今日で見納め…。

「寒いのに窓を開けてどうしたの?、新しい子バイクが調子悪いの?」

「そんな事は無いよ」

 個人事業主一人親方に為る事は話はして有るが以降バイクの配置が変わる事、そしてXTの嫁ぎ先の事は話してない。


「ならどうしたの?」

 今日は上下スウェット、首輪とリードは今も毎日ちゃんと着けている。

 <ホントに危ない何かが目覚めそうで怖いんですが…、自分の彼女だから是はOK?>



 明日は休み、明後日の祝日も休み。次の日が新聞の休刊日、明後日の祝日は当番者を除き全員休み。 

 XTは静岡から引き取りに来られる、其の祝日が引き渡し日。


「えっ?貰われて行くのこの子、ホントに?」

 眼を丸くして驚いてる。

「そっか…この子居なくなるんだ寂しくなるね。あなたが居なかったらあたしお兄ちゃんと会えなかったんだよ。ありがとう会わせてくれて」


 深々と頭を下げて居た、そして・・。

「遅い何て言ってごめんね、本当に怖い位速かったよありがとう」


 XTを見詰め考え事して居たが…。

「ねぇ明日はお休みでしょ?、この子で何処かに出掛けない?でも飛ばしちゃダメだよ明日はゆっくり走って、速く走るだけがバイクの楽しみじゃないもんね!」

「嗚呼そうだな」


 柊も判って来た様だ、仲間でツーリングするも良し、ソロで日本中をゆっくり見て回っても良し、其れこそ乗らずに一日中メンテに明け暮れても良い、バイクの楽しみは乗る人の数だけ在る。


 勿論キチ〇イみたいに飛ばす奴が居ても良いんじゃないのかな?


「そうだな…、此奴を買った目的地に行くか、最後に行くは其処だよな」

「それ何処、遠いの?」

「直ぐだよお前乗せても30分位だよ」

 目的地はオフ用のコースが在る利根川河川敷、自走してコースを走った後は自走で帰る、其れでナンバー付きの此奴を買ったんだ。


足繁く通ったが頭の痛い問題が続きソレ何処じゃ…、


嫁ぎ先が決まったXTでコースを走る訳には行かないが、市街地の傍だし近くに食事場所ファミレスも有るから柊と飯喰って帰って来れば良い。


「もう出れるよ、早く行こう!」

「じゃあ行こうか、今日はノンビリで!」

 翌朝10時に催促が掛かる。

「じゃあ行こうか」

 其々に声を掛ける、片方は何時もと変わらぬ素直な儘、もう片方は別人の様に素直に為った。


 走り出すとXTは素直に反応してくれる、残念だもっと乗って挙げられれば良かったんだが、今日で最後に為るんだな…。


 何度も走った此のルートだがゆっくり走る事は無かった、同じ時間で一周でも余計にコースを回れるように、でも今日は走る事が目的じゃない、軽く回された腕が速度を物語っている。


 あの夜この小さな腕に渾身の力を込めていた、柊を初めて乗せた夜も最後に為るも今もXTは何時でも調子が良い、Γは今でも柊を乗せると機嫌が悪い…。

「すぐに着いちゃうの?」

「もう少し掛かるよ」

 普通に会話出来るのもXTの良い所、其れ位ゆっくり走っている。

「もっとゆっくりでも良いよ」

 答えが返ってくる、柊はXTと話をしているのだろう。


 河川敷の堤防を走り目的地が見えて来る、モトクロッサーのエンジン音が聴こえ2stレーサーだと自慢する様に甲高く響いている。

「音がするよ、もう着いちゃうの?」

「直ぐに着くよ」

「着いちゃうんだ…」

 残念そうな声、あの晩はあんなに嫌ってたのにな笑いが込み上げる。


「どうしたの?何笑ってるの?」

「あんなに嫌ってたの誰だっけ?」

「それ言わないで、今は大好きなんだから悪かったと思ってる!」

 拗ねた声。

「あそこだよ」


 指を差すコースが視界に…、が別の物も目に入る。

「今日も居るんだ?」

 CB50が停まってる、其処に居る人は何時もと同じ佇まいでコースを見ている。



 


手足に為って居た二台と別れのシーン、

埋もれた記憶の中から相棒達が戻って来ます。

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