ペットのいる生活
此奴本気か?
「此処に置いてお兄ちゃん、此処に居て良いよねお兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
遂に壊れたのか?
俺のせいなのか?
如何すれば良かったのか?
如何しなきゃいけないのか?
「もしかして俺が悪いのか?」
いや違うだろう?
もし間違ったとすればあの晩にあそこに行ってしまった事だろう、この娘と出会う事も無かった。
ならば柊は自分の行動に何も疑う事も無く、今迄と同じ毎日を過ごしたとしても、其れに何も疑問を抱く事も無かっただろう?
でも其れって正しい事なのか?
さっき迄の俺の怒りは何処へ行ったんだ?
脚に籠める力を無くしその場座り込む。
今俺は何をすれば良いのだろう…?
この娘は何を勘違いしたのだろうか?
力無く座り込んだ俺を見て微笑みながら四つん這いで近づいて来る。
動物にでも生った心算なのか?
今迄柊を見下していた俺が座り込んだ、其れで目線が同じ高さに為った事で許されたとでも思って居るのかもしれない…。
「あたしは牝戌?それとも牝猫?、どっちでも良いか?ペットって動物だよね!、なら服着てちゃいけないよね!」
服に手を掛け服を脱ごうとし始める。
「もう良い!、そんな事しなくて良いから!、其の儘で居てくれ…」
本心がどうかも判らないのに声をかけていた。
《結局俺って奴は心が絹漉豆腐人間と言う事だ、心が強く在れば其の侭捨て置き非情に徹する事も出来た筈なのに、許しとも獲れて仕舞う言葉が零れていた…》
ホントに大馬鹿者だよな俺は。
此の時に多分一番選んでは為らぬ選択だと思う。
<未だ若くて考えも未熟な若輩者>
膝の上に乗せられた頭撫でて上げていた。
この子は本当に愛していた人の影を俺に重ねて居ただけ、そう此の俺じゃ無い…、だから紛い物の俺に逢えぬだけで心のを保てず代わりに居て貰う者を探しただけの事、其処に悪意は何処にも存在しない。
過去に親の眼を掻い潜り愛した者と逢瀬を過ごしたんだ、愛した者を信じられるから、だから逢えぬとも心を保てて居たのだから。
その後の彼女は健気だった、夜明けまで撫でて上げて居たが混乱と疲労に打ち勝てずに其の侭寝堕ちした俺の側を離れる事は無かった。
目覚めて上手く動かぬ頭で考える、最初からこうして置けばあんな事は無かったのだろうか?
この娘は俺を信じ切れずに同じ過ちを取って仕舞ったのか?
《そう俺自分に言い聞かせていたのかもしれない》
「ちょっと出掛けてきます」
昼過ぎにその言葉を聞き不安を感じた、それに答えるかの様に…。
「向こうのお家からもう少し荷物持って来ても良いよね?」
そう晴れやかに笑って言い外界へ出て行った。
22時を過ぎても帰って来ない、やはり何も変わらないのかとの思いが巡り始めた頃にタクシーが停まる。
「遅くなってご免なさい♥、荷造りと買い物で時間掛かってご免なさい!。心配したよね?でも此れで心配しない様に為るから!もう私も此れで不安に為らないで済むから‼」
トランクから衣装ケース二つと段ボールを降ろし、後部座席から小降りな段ボールを取り出しタクシーは走り去って行った。
運ちゃんは何故か俺を値踏みする様な眼差し、柊には訝しがる様な眼をして居た、何故そんな眼て見られたのかが判らない…。
「荷解きは明日学校から帰ってからするよ!、此れからは此処からちゃんと学校にも毎日通う!、お兄ちゃんお腹空いた!ご飯とお風呂にしよ!」
途中で弁当屋にでも立寄ったのだろう、ほか弁の袋を嬉しそうに掲げてる。
「お兄ちゃん先にお風呂に入って、準備して置きたい物が在るから」
「嗚呼判った」
「是は何だ?」
途中で風呂へ入って来る事は無かった。
「あたしもお風呂に入るからまだ見ないでね♥」
タクシーを降りる時に座席から持って居た小振りの段ボールが炬燵の上に置いて在る。
「其れはお風呂上がってからね!」
と言い風呂へ行った、何故か手にレジ袋を持って居た様だが…、まぁ良い先に寝て置く事にした。
「起きてくれる、お兄ちゃん」
うとうとして居た様で風呂から上がった柊に起こされる、何時もと違いバスタオルを纏って居る。
寝入り端に起こされて寝惚けて居たが直ぐに覚醒する事に為る。
「開けてみてくれる?」
段ボールの中の大きめの袋を二つ手渡される、片方はホームセンターのレジ袋。
「其れをあたしに着けて下さい、貴方の物だと解る様にね!」
紅い首輪とリード…。
「失敗したかな?、この長さだと繋がれたら家事も出来ないな…、今度もっと長いの買ってくるね!」
<こいつ本気なのか?本当に此処で俺に飼われる心算なのかよ?>
「留め具に首輪を外せ無い様にする金具が有るでしょ、其処にこれを付けてね♥」
と袋の中から取り出した南京錠を手渡される。
「此処の金具に普通ならリード繋ぐんだけどね、金具に鍵を付けたらあたしじゃ首輪を外せ無くなるでしょ?」
やっぱりコイツ壊れちまってる。
「カギを無くさないでね、一緒にお出かけ出来なくなるよ、首輪とリード付けた儘でお兄ちゃんが恥しく無ければあたし構わないけどね♥」
<本気なのか?正気で言っているのか?>
「柊、御前…」
「あたし本気だよ、聞きたく無いと思うけど聴いて。誰もお兄ちゃんの替わりに成れない、他の人じゃあたしの心は満たされ無かった、でもお兄ちゃんに撫でて貰っただけで満たされたの、もう何処にも行けない様にして!」
眼を逸らさず真っ直ぐに俺の眼を見据えてる。
「あたしお兄ちゃんの持ち物に成るの、お片付け出来なくてもバイクは大切にしてるよね。あたしの気持ち何てもう要らない、お兄ちゃんの持ち物の一つに成りたい、そして躾て貰うの‼」
言い終える迄眼を反らす事は無かった、コイツ本気なんだ!
「恥ずかしいけどコレもあたしに着けてね!」
残るもう一つの袋を渡された、中には信じられない物が在る。
「お前コレ如何やって手に入れたんだ?」
勿論ホームセンターに売ってる物じゃ無い。
「来る途中で寄って貰ったの、流石にこの時間じゃないとお店開いて無いから買えないよね?」
運ちゃんがあんな眼で俺を見る訳だ…納得した。
何つ〜物を…
(@_@;)




