言葉の届け先
謎が解けた!
(・∀・)ウン!!
面接は履歴書を提示し粗形式のみであっさりと決まってしまった、今迄何度挫けそうに為った事が嘘の様に。
募集人員はたったの1名。
俺は其の1名に成れた。
今回欠員が出る為其の補充に募集が掛かったと言う事の様で或る。
其の侭引き続き勤務体制と処遇の説明を受ける、説明の中で意外だったのが派遣先に直行直帰で良い事、週一度事務所に立ち寄り勤務報告の日報を纏めて作る事、立ち寄る曜日等指定は特に無し。
コレで先程に来られた先輩が予告無しの来訪も、何故面接の時間が来訪されるタイミングと被ったのかも判明した。
(・∀・)謎が解けた!
車両は貸与でタンクバッグも車両に装備される、自前で準備するのは仕事で使えるライディングウェア一式、規定は無くジーンズにTシャツでスニーカーでもOKと言う、最初は胸に自社のマークが刺繍された薄手のジャケットが支給、と言われ眼の前に置かれた…。
さっきの方が羽織られた物と同じメーカー純正品、と言う事は車両はHONDAって事か…。
(。・_・。)ナンダロ?
「車両はHONDAのVT車両は判るかな?」
「分かります!」
「メーカーのリース車両だから故障は指定のウイングへ持ち込み、バイクは弄れるかな?」
「ある程度はメンテナンス出来ます」
「それは良かった。通常メンテナンスの範疇に為るから自車のオイル交換は自前で行う事」
「判りました!」
「其のオイル交換は日報の作成の時で良い、裏に駐車スペースとオイルと工具も置いて有るから其処で行う事」
「はい!」
「間違っても他のオイルは入れるなよ、リース車両だから保証の対象外になるからな」
自社所有のバイクじゃ無いんだ…、リースでVTだって言ってるし…、250ccの4stでプレスの仕事を熟すのか…。
「あと何か有った筈だ…、そうだパンクは直せるかチューブレスだから難しくは無いが?」
「バイクでは無いですが、車なら修理キット使って何度か直した事が有ります!」
「なら心配要らないな、宜しく頼むぞ!」
「宜しくお願い致します!」
!(⌒▽⌒)!
こんなにアッサリと決まってしまった、VTって処が他の会社が400ccクラスだったから一寸引っ掛かるけど…、確か皇居前でも何台か見掛けたな…。
「其れで勤務は三週間後の月曜日で大丈夫かな?」
「私は何時からでも勤務可能です!」
「良い答えだ、此処に10時に現着で良いな、間違っても自分のバイクで来るんじゃ無いぞ、此処でバイクを引き継ぎ後派遣先へ向かって貰う!」
「ハイッ!」
(⌒▽⌒)
厳しい制約は無く自由な事が多い反面、逆に本人の自制心と資質を試されると言う事か…、是が篩という事なんだな、社長が一言だけ厳しい言葉で言われたのは…。
「これが最後だ、必ず時間内で届ける事!」
此の事を厳しい口調で申し渡された。
<厳命である!>
「有難う御座いました、では指定時間で参ります失礼致します!」
m(_ _)m
勤務は三週間後から、前任者の退社と入れ替わりと為り、退職時に車両が空き其の車両を引き継ぐ、其れ迄は自宅待機に為る。前任の方は御実家の家業を継ぐのに退職されると聴き安心した、そう事故や怪我でお辞めに成る訳では無いのだから。
気に成るのはVT250Fと以外な車両を告げられた事、最大手の貸与車両はCBX400Fだった、初期型VTは確か35PSしか無かったと思う、其れで乗務を熟すの?って素直に思った、だが先輩方は其の車両で乗務されてるのだから今俺が此処で考えてもしょうがない、乗って見れば其の答えが解る筈だ。
教習車と奴のVF何れもチョイ乗りした以外は初めての4st、期待半分不安半分、俺は彼らの仲間入りを果たした、後は俺が何処まで彼等に迫る事が出来るかの挑戦が始まるんだ!。
足取りも軽く曳舟線の駅まで戻りホームで亀戸行きの列車を待っていた、立つホームから見上げる空の方角は北東へ続いてる…。
『もう雪が降ってるの……』其の言葉が聴こえた気がする、俺が見上げる空の下にきっとあの女性が居る筈、今日の事を一番最初に伝えたかった其の人はもう居ない…。
反対側のホームへ滑り込んで来る列車、其れを告げるアナウンス、俺の言葉は掻き消されるだろうな…。
『悠美のお願いが通じたよ、俺の夢を叶えて呉れて有難う!』
空に向かって言葉を発する、届く事の無い言葉はアナウンスと列車のブレーキ音に掻き消される。
皮肉な物だ、どんなに厳しい条件、どんな距離、不可能に思える時間でも必ず届ける事を是から生業にする俺が俺自身の発した言葉すら届ける事が出来無いのだから…。
両親と親父さんには面接決まった時点で連絡を入れてある、後は採用の連絡入れるだけ、先ずバイト先の店長に報告する、面接が決まった時点で辞める事は伝えて有ったのでシフトが大変だと言ったが『良かったな今度は御客として顔出せよ!』と言ってくれた。
次に実家に電話を掛け決まった事を伝える『本当に良かったね、良かったね、でも怪我しないようにね』と泣いて居た、親父さんは『そうか仲間入り出来たんだな。倅ももう直ぐ卒業だとよ』と教えてくれた、アイツも夢を叶えられそうなんだ、俺に関わる人が喜んでいる。
<言葉を直接伝えたい一番伝えたかった人に、一番喜んでくれただろう其の人に…、其の事が悔しい>
今総武線の電車の中でロングシートに座り恥ずかしい思いをしてる、ラッシュを過ぎた時間で席は空いている、周りから変な視線が突き刺さる、メンタル絹ごし豆腐な俺には辛い、多分事故ったか故障で電車に乗って居ると思われてるのだろう、そう今日が初出社…。
家中探したが良い入れ物が無く、オリジナルをベースに配色を変更し目立つメットをむき出しで抱えてシートに座ってるんだからしょうがない。
社長から多くは言われなかったが『事故にだけは気を付ける様に!』と、其の後派遣先へ先輩の後を付いて行く様に言われ、向かう先、そう配属先は新聞社、会社名の新聞本誌<以降本紙と書きます>同名スポーツ新聞、工業新聞に夕刊紙、週刊誌他と多岐に渡る出版物を出している新聞社。
「今日から宜しくお願いします!」と先輩へ挨拶したのだが。
「同じバイク乗りなんだから、堅苦しい挨拶は無し、仲よくしよう、ツイて来な!」
先輩が言ってくれ、同じVT250Fで会社から配属先の新聞社へ向けスタート。
PRESS編のスタートです!何が起こるか?起きるのか?皆さん方本当に上手いんです、技能は白バイの上を行く。
こんな方々ですものそりゃあ伝説にも成りますよ、森田は彼らの背に追い付く事が出来たのか、其れを知る由も在りません、其れだけは現在でも判りません…。
危険な業務の割に給料は安いんだよ!
(ノД`)シクシク