影武者
影武者?
対向車線の先頭に止まるバイクは誰が見ても俺其の物!、本人が確認して言ってるんだから間違い無い、其れ位にソックリなんだ!
此の儘追ってみるか?そうとも考えたのだが、車両入れ替え手続きに以外に手間取ってしまい、出社までの残り時間に余裕が無い…。考えてる内に交差側の歩行者信号が点滅を始める、視線をそのライダーに向けると向こうも此方を見てる?、信号が変わりスタートしすれ違い際に確かに此方を見てた。
ミラーに写る姿に決定的な証拠を見つけた!
<ナンバーが違う!>
ついさっき迄乗っていた相棒のナンバーを間違う筈が無いよな…、結局別人か漸く理解出来て安堵した。ただ、此処迄そっくりな格好した人が居るんだとも思ったのも確か、そんな思いを持って本社へ向かい詰所に入り…、
「さっき俺も見ました!」
「どうだった?そっくりだっただろ!」
俺の報告にみんなが注目する。
「俺が走ってると思いました!」
『そうだったろ!』
其処に居合わせた全員が声が上がる。
「メットから服装もバイク迄全く同じでした、ドッペルゲンガーかと思いましたよ!」
皆一様にそうだろと言って居た。
「でも今日車両の入れ換えでVT−Zに替わったんで以降は無いと思います!」
そう伝えたんです、コレでこの騒ぎも収まると思ったのですが・・。
その日二回目の乗務を終えて詰所でバイク誌を読んでいた、ソロソロ兜を換えようと思ってまして、皆さんは殆どジェットヘルを使ってる、俺も新調したいなと思って…、其れで職業ライダー御用達の昭栄TJ201Vを各ショップの広告で相場を見てた、アレから一週間程は何事も無く誰にも居場所を聞かれる事も無く無事に過ごせたのだが、詰所に乗務を終えた村上先輩が戻られ俺の顔を見るなり聞いて来たんだ…。
「さっき迄何処に居た?」
<遂に来た、また始まったのかよ…>と思ったのだが、でもバイクも代わってるし例のVT-Fを見掛けたのかな?なんて思ってました。
「朝◯新聞の配送トラックの処ですよ?」
当社トラックの配送が無い地区に本紙を届ける場合、他社の配送網利用させて頂く為発送元迄届けるという乗務が在ったんです、刷り上がった新聞の束を先方の印刷工場に併設されたトラックの発送場所へ届けるんです、唯、時間厳守で万一遅れると其のトラックを延々と追って行く事に為る、過去には静岡付近まで走った方が居るらしいです、幸いにして其の経験は無いですが。
「そうか千歳船橋だよな、実はな練馬区役所へ向かう途中で見たんだよ、それもVT-Zに乗ってたんだよ」
車両まで同じだと?思わず固まってしまった。一体何が起こってるんだよ?。背中に水を掛けられた様で寒気が走ったが言葉が続く…。
「信号待ちで対向車線に居たんだが、お前よりちょっと小さかったぞ」
メットも同じで然もオリジナルのカラーリング、そして同じ白のVT250Zだと?。
そう言えば納車直後すれ違う時に奴もこっちを見ていた。車両迄入れ替えて居るとは一体何の心算なんだ?、今度見かけたら追ってみるか!。
その後も目撃情報は続いていた、範囲が特定できた、甲州街道新宿付近から神田やお茶の水付近迄に集中してる、時間は遅くても夕方迄に絞られた。
早朝や夜間の目撃は無い。ただ目撃される時間はバラバラだ。もしかしてあの付近の学校に通う大学生か?、でも車両を変えられる程大学生ってリッチなのかな?、講義に合わせて来ているのなら時間はバラバラでも日中しか講義は無いから辻褄が合う。
<ヤッパリ本人に聞くのがてっとり早いよな?>
然も目撃談が家だけでは無い様で…。
「お宅のキチ〇イ随分大人しく走っていた様だなって言われたよ」と矢部先輩が言われたと教えて呉れる。
<どんな風に思われてんだ俺って?>
どうも単独乗務初日の事が広まってる、他にも猪突猛進野郎とかロケットなんとかとか。
<俺って如何見られてるんだ?それも同業者から>
程無くその機会はやって来た。豊島区役所からの帰り御茶ノ水付近…<居た!前を走って居る!>
時間は有る、<ちょっと様子見るか>確かにお行儀良く車の後ろに着いて走って居る。赤で止まるとやっと車の前に出る、一般的なライダーさんの様だ。
次の赤信号で車の列を左側から前に出た、今だ一気に車の間を抜け右に並ぶ。
驚かせてしまったのか此方を見て固まってる。
「ゴメンね脅かせて、聴きたい事が有るんだけど少し時間ある?」
コクコクと頷いてる、ついてきてと伝え直ぐ先で歩道に乗り上げて停める、続いて停めたやっぱり学生さんだった。
「ホント驚かせてゴメンね、本当にソックリな格好してるから、こっちが驚いちゃってさ一度話聞きたくって声掛けちゃったんだよね」
其処でメットを外した。
ライダーさんは固まった侭…。
<悪い事しちゃったかな?>
漸くライダーさんと話す事が出来ました、只先方は緊張しまくって最後までメット外すの忘れてたみたい、次回本心が解ります何で此処迄そっくりなのか、まぁ皆さん想像ついてらっしゃると思いますが…。
次回に続きます。
(ΦωΦ)フフフ…