ホワイトクリスタル
彼女は刺激を求めていました
私に悪いところなんて一つもない
悪いのは頭だけよ
半ば自嘲的に
半ば誇らしげに
彼女は笑うのでした
そんな彼女に
クスリの魔の手が忍び寄りました
最初は快楽を
意のままに操っているような快感を感じていた
彼女も
現実とあまりにかけ離れた景色の前に
次第に自分を見失って行きました
ある日空から降ってきた白い粉を見て
彼女はこう思いました
「ああ ホワイトクリスタル ここは私のエリュシオン
ハデスも気持ちを良くして踊りだす」
おどけてみせている彼女は幻覚を見ていました
夢を見せてくれる白い粉だと思っていたものは
ただの 雪でした
もしも彼女がひらひらと舞い散るだけの落ち葉
ならばその軌跡を見て誰が美しいと思うでしょうか?
雪解けの少し濁った水たまりが
例え異世界に通ずる扉だとしても
それを覗き込む勇気さえ彼女にはなかったのです