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愁人
人々は「早く忘れなさい」と言うけれど忘れられるものですか
たった一人の我が子の命 あの子の命は私の命
代われるものなら 代わってやりたい
主を失ったそのままの勉強部屋が
減る事のない一揃いの夕食が
あの子の存在を証明している
私の心の中の
箪笥の中を探しても 靴箱の中を探しても
私の探し物は見つかりはしない
見つかるのは見つけたくもない
引き裂かれた自分の姿だけ
人々は「一時的なものだよ」って言うけれど
命 命 命 命 命 文字で書いたって伝わりはしない
まるでみみずがのたうちまわっているよう
行き先を忘れて
例えいつか私が死んで その体が灰になっても
燃え残った思念は 天に届くに違いない
そして雲が泣くのを見て
あなたたちは私の悲しみの深さを知るでしょう
私は確信しているのです
空が代わりに泣いてくれるのだと
とらわれの囚人のように
かごの中で小鳥がさえずっていました




