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三話 誘拐だろ

「……んぅ…」


 あれ…なんで床で寝てるんだ?落ちたのか……体の節々が痛い……起きよ。


「んっ……んん……石、畳ぃ…?…は?」


 ポク、ポク、ポク、チーン


 人って訳わかんない状況になるとマジで思考停止するんだなぁ………じゃなくて!!


「えっ、いやっ、は?」


 どこだ…ここ…。いやマジで。なんで鎖なんて着いて…それに…ここは…教……会…か?


 かなり大きいステンドグラス。全く記憶にない石畳の床。知らない天井すぎるんだけど……。四肢と首についた枷。ぐるっと一周俺を囲む見たことも無い文字の羅列。どうなって……俺今から何されんの?


「目が覚めたか」


「ふぉわっ!?」


 誰!?


 声の元を見ると、そこには1人の男性と女性がいた。


 男性の方は、煌びやかな装いで大きな玉座に座っている。


 どう考えても思考停止案件だし、非現実的な服装をしている男性。


 でも俺の視線は、その横の女性に釘付けとなった。


 背中の中ほどまである透き通った、しかし黒っぽくも見える白髪はくはつ。何もかも見透しそうな白髪によく映える切れ長の黒目。無駄を極限まで排除した、かわいい、というよりか、綺麗、美しい、と感じさせる整った顔立ち。


 つまるところ、絶世の美女。


 一目見た瞬間、ああ、この人は特別だ。この世の誰が見ても、一目でそう感じさせる。そんな圧倒的な何かを持った女性が。


「申し遅れた。余はアズガルム王国国王、ノーゼン・ルアル・アズガルムという」


 慌てて思考を元に戻す。


 アズガルム王国?聞いたことない……少なくともアジア圏じゃないよな……ってことは誘拐されたのか?何のために?俺に誘拐するまでの価値があるのか?


 国王が出張ってくるってことは国を挙げての誘拐ってことか?


 疑問が尽きない……ああもう、訳わかんない!!


「貴殿の名を聞いてもよいか?」


「あっ、は、はい! お、俺の名前はっ、よ、世和井かりゅまでしゅっ!!」


 噛んだぁ……自己紹介で噛むなよ…はっず。


「ヨワイ・カリュマ……うむ。 これからどうぞ宜しくな」


 少し反芻するような素振りを見せてからそう言った。


 いや違うの!


「い、いえ、今のは噛んだだけですのでっ! 世和井狩真と言いますっ!!!」


 緊張し過ぎだろうが。


「ははっ、そうかそうか。 どうか、そこまで緊張なさるな」


 よくよく見れば、辺りには2〜30人くらい法衣?みたいなものを着た人がいる。


「さて、早速本題に入ろうか」


 本題……俺がここにいる理由かな?何のために俺を誘拐したのか…俺になにをする、またはさせる気なのか。聞きたいことはいろいろあるけど……取り敢えず話を聞くのが早いかな。


「この国には約1000年ほど前からある言い伝えがある」


 言い伝え?


「“このアズガルムの地が本当の危機にさらされた時、異邦人がこの地を訪れる。彼の者に助けを乞えば、この地には 安泰が約束されるだろう”と」


「我々はその言い伝えに則り、その者がこの地を訪れるその時を待っていたのだが、一向に現れる気配が無くてな…」


 ほぉ…


「禁忌と知っていながらも、言い伝えと共に残っていた魔法を使い、貴殿をここに、この世界に喚び出したのだ」


 ………ツッコミどころが多いな。魔法?この世界?どういう意味だ?


「えっ…と……つまりここは俺がいた世界と違う世界ってことですか…ね?」


「左様で」


「そ、それって!帰れるんですか………?」


「……………申し上げにくいのだが、それは不可能だ」


「……はぁ?」


 いやいや、いやいやいやいや!!!


「ちょ、ちょっと!!!いくらなんでもそんなのって___」


「そして最も主となる部分だ」


 まだメインじゃないのかよ!!


「貴殿には、どうかこの国を救っていただきたいのだ」


 ………は?


「………は?……えっ、いや………っは?」


 いやいやいやいや、どういうこと!?無理でしょそんなん!!


「すっ、すみません!どういうことで……?いきなり国を救うって……」


「言葉の通りでだ。今、この国は隣国との戦争の最中でな……今はそこまで致命的な被害があるわけではないのだが……それも長くは持たないだろう。そうなる前に、手を打っておきたかった」


 だからって…そんな…


「この国は立地上、魔物の被害が多く……そこに隣国との戦争まで加わるとなると……」


「そこで我々は異邦人の力を頼ることにしたのだ」


 いや、でも…………そんなこと俺に出来るわけないじゃん………


「異邦人の特徴は、清黒(せいこく)の髪に透き通った黒眼。そして、人智の及ぶことのない強大な力を宿している、と言われている」


 そんなの日本に行ったら沢山いるじゃん……。


「いやっ、でも……そんなの俺じゃなくても──」


「今この国はっ、窮地に陥っているのです!!」


 声のしたほうを見れば一人の修道服を着た男性がいた。


「身勝手なのは重々承知しております!ですが、もう我々は頼るしかないのです!!」


 ………………………


「彼の言ったとおり、我々にはもう余裕がないのです!」


「無理を言っているのはわかっています!!でも、そこをなんとかお願いできないでしょうか!!」


 次々と声が上がる


 ………簡単にYESって言えることじゃない。だって俺が少しでもしくじったらこの国にいるすべての人の生活が変わってしまうんだから。俺一人の失敗で、何千、何万という人の人生が懸かっているなんて、そんな責任負えるわけない。


「……………」


 綺麗な()だ。嘘はついていない……多分。嘘ついてたらこんな綺麗な()にはならないと思う。


 どうする?どうするのがいい?


 というかなんで俺はこんな人生の岐路みたいな状況に立ってるんだ?


 起きたらなんか知らないところにいて、鎖ついてて、まだ起きて30分も経ってないのに…わけわかんない。


 秀斗や轟さんならどうする?秀斗なら………


『いいんじゃないか?お前のしたいようにすればいい』


 そうだよな。多分こう言うよな。轟さんなら………


『やる前から決めつけんなよ。狩真はできる子なんだから」


 こう言うよな。


 よし……………


「わかりました。俺にできる範囲でやってみようと思います」


 正直言って浮かれていた。めちゃくちゃ浮かれていた。だってそうでしょ?すごい力を持ってるなんて言われたらそうなるに決まってる。今までなんにもできなかった俺が、誰かのためになれるなんて言われたんだから。


 まあ現実そんなに甘くないよね!!


 特に俺には…………



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