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二話 保護者二号

5年前_________________________________________________________________________________


 5年前、俺は虐められていた。今もそうだけど、内気で暗いヤツなんて小学生なら余計格好の的だよな。


 後々聞いた話だけど、俺のお父さんも虐められていたらしい。血筋なのかなんなのか、抵抗しようとは思えなかった。


 最初はありきたりな靴を隠すだとか、教科書をゴミ箱に捨てるだとか、まあちょっとウザいなって思うくらいのことだった。でもある時殴られて、そこからどんどんエスカレートしていって、流石にヤバいと思って担任に相談したけど、面倒ごとを嫌ったのか無視。


 ある日、いつも通り校舎裏に呼び出されて殴られていると、


「何をしているんだ!?」


 俺は焦った。まさか秀斗に見られてしまうとは思わなかった。このままではまた秀斗に迷惑をかけてしまう。それだけは俺自身が許せなかった。だから…


「大丈夫!俺は大丈夫だから!!こんな奴らほっといて行こ!!」


 無理に笑ってその場を離れようとした。今思えばなんで中1の秀斗が毎日小学校まで俺の迎えに来てたのかわかんないけど、そのせいで秀斗に迷惑はかけたくなかった。


 でも秀斗の反応は俺の想像とは全く違った。


「ふざけるな」


 その一言で場の空気が凍りついた。普段の秀斗からは想像のつかない底冷えた声。


「お前ら、俺の狩真にこんなことしておいて……タダで済むと思うなよ」


 秀斗がそう言うと、俺を虐めていた奴らは言い訳を始めた。


「ち、違うんだよ秀斗くん!!僕たちは何も悪く無いよ!!」


 いや悪いだろ。


「そうだよ!全部こいつが悪いんだ!!!」


 俺は悪くないだろ。


 いじめっこたちの言い分を要約するとこんな感じ。


 曰く、前々から俺のことが気に入らなかった。

 曰く、秀斗とずっと一緒にいる俺が嫌いな女子に頼まれた。

 曰く、ストレス発散。


 いや理不尽すぎね?俺なんにも悪くないよね?


 それを聞いた秀斗は激怒。でも顔には出さず静かに激怒していた。


 結局その日は校長が来て仲裁。お開きとなった。


 翌日、登校したらいじめの主犯たちと担任が居なくなっていた。理由は知らないよ?


___________________________________________________________________________________________


 などなど。こんな感じのことがあってから、秀斗が異様に過保護になった気がする。


 やっぱり俺のせいで秀斗の人生を変えてしまったのだろうか。だとしたら申し訳ないじゃすまない。俺が不甲斐ないせいで人一人の人生を狂わせてしまった。やっぱり俺なんて……


「ふぅ…こんな暗いこと考えてもしょうがない!!風呂入ろ!」


 そう思いソファーから立ち上がろうとしたその時、スマホが鳴った。


「んあ?誰だよもぉ……………ゲッ」


 スマホの画面に表示されていたのは(はたがしら)(とおる)


 確か秀斗と同じ高校で、副生徒会長。こちらも秀斗に負けず劣らずの超名家のお嬢様。


 俺が中2の時カツアゲされかけてる時に助けてくれたのが多分初対面。お姉ちゃんって呼ばないと叩かれる。


 こちらも秀斗と同じく過保護。こちらも同じくってなんだよ…。


「もしもし、どうかしましたか?轟さん─『お姉ちゃんって呼べってつってんだろ』はいごめんなさい」


 ほらね?


 そんなことより、もし轟さ『お姉ちゃん』……お姉ちゃんにカツアゲ未遂の話いってたらすごいめんどいんだけど………


「えっと、それで…本日はどういったご用件で……?」




『あ〜……ただの生存確認だ。最近元気かなって』


 セーフ………


『まぁそんなことより、お前、なにか私に言わなきゃいけないことあるんじゃねぇか?』


 うん?


「……な、なんのことで……?」


『なぁ狩真、私最近変な夢見るんだよ』


「ゆ、夢?」


『そう夢。内容はある1人の女子高生がな、可愛い可愛い弟がカツアゲされて…んで、その弟がいる高校に殴り込むっていう———』


「分かりましたっ!言います!言いますからぁっ!!」


 轟s『お姉ちゃんな?』……お姉ちゃんならマジでやりかねない


 その後小一時間ほどこってり絞られましたまる


 疲れたよ○トラッシュ……


 お風呂に入った後ゴロゴロし、気付けばスマホを見たまま寝落ちしていた。

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