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プロローグ






 私は今、担任教師の死を目撃してしまった。

 じんわりと排泄物と血の匂いが広がって、先生が死体になっていく。



 井草の香りのする新しい畳が敷き詰められた大きな部屋は、まるで時代劇に出てくるお城の中のようだった。人数分用意されたふかふかで紫色の座布団にこの場所にはそぐわない、制服姿のクラスメイトたちが向かい合うようにして座っていた。

 そのクラスメイトたちが向かい合って座っている中央、大の字に寝そべっているのは浅田ケンイチ。私たちのクラスの担任で、明るく人気な体育教師だ。ケンイチ先生は男子からも女子からも人気の先生で、クラス担任に決まった始業式時には体育館でクラスメイトたちが大喜びして注意されたっけ。



「嘘、ケンイチ先生本当に死んだの?」

 シンとした空間で、震えた声の鳥谷レイが言った。

 誰もレイの問いに返答しない。畳の上で動かなくなった大きな男は私たちの担任、浅田ケンイチだった。

 先生の額と屈強な左胸にはサバイバルナイフがずぶりと突き刺さっている。先生は目を見開いたまま、ピクリとも動かない。


「先生、もうドッキリにしちゃ趣味が悪いよ。ほら、早く」

 クラスのリーダー格の横田セリナは苦笑いを浮かべると先生に近づいて左胸のナイフを引き抜いた。

 多分、ナイフは偽物でパーティーやマジックなんかで使われる少しリアルなやつだよね? 先生はきっとわたしたちを驚かせるためにこんな場所に連れてきて、デスゲームみたいな演出もして……そうだよね?

 セリナがナイフに触れたら先生が起き上がってにっこり笑って、それから全部嘘だったよ。サプライズ! 良い知らせがあるよ! なんて言ってくれるじゃないかと思っていた。

 しかし……ぶちゅ、と生肉を切るような嫌な音が響いたが先生はピクリとも動かない。

 それどころか、瞳の瞳孔は開き、流れ出た排泄物でズボンと畳はぐっしょりと濡れている。

「うっ、浅田ドッキリにしちゃやりすぎだろ! まじで漏らしてんじゃん」

「せ、先生? おーい」

 あまりの強烈な匂いにほとんどの生徒が口元を袖で隠していた。

 私たちがどんなに呼びかけても先生はピクリとも動かない。ただ、不快な汚物の匂いが広がるばかりだ。

「ねぇ、でもほら血…出てないよ?」

 セリナが苦し紛れに先生の左胸を指差した。

「死んでるから……じゃない?」

 返答したのはセリナの取り巻きの一人、アオイだ。彼女はギャル軍団の中でも成績が優秀な生徒だ。

「死んでるとなんで血が出ないのよ」

「心臓が……止まるから、血管に血液が流れなくてドラマみたいに吹き出したりしないって聞いた。ねぇ、脈は?」

 セリナは先生の手首を掴むと首を横に振った。それから死んでいるという事実を理解し、彼女は飛び退くようにして死体から離れて恋人の後ろに隠れるように座りブルブルと震える。



「さ〜て、死んでるね。死んでるね!」

 薄汚いウサギのぬいぐるみはピカピカと光る。

「クソウサギ! なんだよ! 先生、ほんとに……」

 横田セリナがナイフを放り出すと、腰を抜かした。

「言ったヨー、鬼探しゲームには命を使ってもらうって。浅田ケンイチ先生は君たちの投票を集めてルール通り死んだんだぴょーん。さ、画面の前の皆さん! お待ちかねの先生のヒミツ……発表〜!」


<体育教師の秘密楽しみ〜>

<えっぐいのたのんます!>

<エロいのがいい!>



 監視カメラが一斉にピカピカとLIVEの赤いランプを灯す。プロジェクターに移されたコメントは読めないくらいに早く流れていく。

 そう、この空間は……このデスゲームは全世界に配信されている。ついさっきまで、平凡な高校生だった私たちは今この狂ったゲームの参加者となってしまったのだ。




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