4. 変わりすぎたヴァル
僕は、ヴァルと一緒にユニクロに行った。
「どんな服が良いの」
「そうだね、なるべく目立たない服が良いかな。あとは地味な服」
「地味でいいの? えっと、じゃこれとかどう?」
「これって着ていいの? 」
「あそこの試着室でね。ただ破らないでね」
「分かった」
そう言って試着室に入った。
僕は深い溜息をついた。
なぜ、深い溜息をついたのか。
それは、ヴァルにお母さんの靴を履かせてユニクロで行く途中、小学生くらいの子供が、
「カップルだ〜」
って、めっちゃ大きな声で言われたから。
しかも、めっちゃ人が多いのに。
恥ずかしい。
でも、小学生が言う前に大人や若い人からめっちゃ見られたな。
まぁ、確かにヴァルはめっちゃ美少女だし、僕はさっき逆ナンされそうになったし。もちろん断ったけど。
っていうか、なんで僕は逆ナンされたんだ?
しんどいな。
ちなみに、ヴァルが目から出てきても目の色は水色、黄色のままだ。
すると、ヴァルの試着室のカーテンが開いた。
「どうかな、似合ってる? 」
とヴァルが言ってきた。
ヤッバ。
ヴァルに勧めたのは黒のブラウスに白いフード、黒いズボンだ。
ヴァルの言う通りに目立たない服で地味にしようとしたが、なぜか似合ってる。
他の男性以外に女性や店員さんまで、固まってヴァルを見ていた。
「ちょっと、どうなの? 」
ヴァルは少し怒り気味でいった。
「えっと、似合いすぎてる」
僕は素直に感じたことを言った。
「う〜ん、そっか。まぁ、これでいいかな。あと、もう二着買っていい? 」
「いいけど」
「やった! 」
ヴァルの笑顔は可愛かった。
その後、合計4着買って1万5,000円かかった。
家について、僕はソファーに寝転んだ。外出する前に掃除をしたから綺麗になった。
時計とカレンダーを見ると、今は5月7日で夕方の午後6時だった。
そろそろ、晩ごはんを作らないといけないな。
僕が起き上がった時、ヴァルはもう一つのソファーに寝転んでいた。
「お〜い、どうしたんだ? 」
「お腹が空いて力が出ない……」
「アンパンマンかよ」
でも、アンパンマンって顔が濡れて力が出ないっていうセリフじゃなかったっけ?
ま、いっか。
「ちょっと待ってろ。晩ごはん、作ってやるから」
「本当? 」
「本当」
そして掃除をしたばっかのキッチンで何を作ろうかと考えた。
えっと、冷蔵庫と冷凍庫にはまだ食材は入ってるな。
「ヴァル、肉か魚、どっちが良い? 」
「肉」
とヴァルが寝転んだまま言った。
「了解」
じゃあ、合いびき肉があるからハンバーグにしよう。
僕は、玉ねぎを加熱して、ハンバーグをまるめた。
「ん? ヴァルは封印されてた時どうやって生きてたんだ? 飯を食わずに」
「……。」
ヴァルから返事はなかった。
なるほど、お腹が空いたのは嘘だな。
「どうして、嘘をついたんだ。理由を聞かないと僕の分しか作らないぞ」
「だって、帰りの途中で美味しそうな料理を見つけたんだもん」
確か、帰りの際に近道で飲食店の近くを通ったな。
「でも、その料理のレシピは知らないぞ」
「人間が作った料理は何でもうまそうだから。海は人間だから美味しい料理は作れるでしょ」
「適当すぎるだろ」
「えっ、じゃ作ってくれないの? 」
ヴァルは涙目で言った。
おいおい、それはズルすぎる。
「分かった、分かった。大丈夫、ちゃんと作るよ」
「やったー!」
っていうか、敬語からめちゃくちゃ口調が変わってない⁉
そんなことを考えながら、僕はハンバーグとご飯、サラダ、味噌汁を僕のを合わせて二人分作った。
運ぼうとすると、ヴァルは椅子に座った。
僕は、まずヴァルのご飯を置いた。
「おぉ、美味そう」
「待った。いただきますを言って」
「なにそれ」
「日本でできた作法で、食べるときに手を合わせて「いただきます」食べ終わった後に「ごちそうさま」って言う、食べ物に敬意を表すときに使われるんだ」
「へぇ、言うの? 」
「いちよう」
「仕方ないな」
そう言って、ヴァルは
「いただきます」
と言った。
僕の分も置いていただきますと言い、食べようとした時
「美味しい!」
とヴァルが言った。
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