3. 共同生活の始まり
目が覚めると、見慣れない天井があった。起きてみると、突然、何かが落ちる音がした。
音がした方を見ると、看護師さんが道具を落としてこちらを見ていた。
「せ、先生、先生を呼んできて」
――うるさいな。
ちゃんとした体の感覚はあった。
慌ててきた白衣を着た医者は、僕をみて尻もちをついた。
そして、CTという大きな機器などで色々な検査を受けた。
僕の体の回復力に主治医はこういった。
「信じられない。まさに君は奇跡の子だ。君は植物状態に陥ってたのに、現に動いている。」
ありがたい言葉だ。
だけど、少しだけ気になった事がある。
「僕の親は今どこに?」
病院で両親が見舞いに来なかった。
まぁ、あの両親なら見舞いに来ないだろうが。
そういうと、主治医が看護師の人と目を見合わせ、こういった。
「残念だが、海くんの父は酒の飲みすぎで病死、母は事故にあったんだ。二年前のことだったかな」
「二年前? 」
「そうなんだ。 ふたりとも、死んでね」
少しだけ、僕の顔色を伺ったが無表情でそうですか、といった。
むしろ有り難い。
親は僕のお金に手をつけるほど、性格が悪かった。あのときの赤い鞄も、僕のお金で払ったのだろう。
しかし、二年も経つのか。
そして、いろんな検査が続いた。
あと、両目の色が変わっていると言われた。
鏡を見ると、右目は黄色で左目は水色だった。多分、ヴァル
が目に入ったからだろう。
テレビでは、僕のことがニュースに載っていた。
もう、テレビには出たくないな。
そして、消灯の時間に僕は、ヴァルと会話をした。
そして退院の日、僕は自分の家に帰った。
階段の手すりや本棚のところはホコリまみれだった。
仕方ない、掃除をするか。
掃除をしようとした矢先に、何か嫌な予感がした。
今、僕の部屋の中にいるのだが金庫と貯金箱がなかった。
まさか、あの親、僕のお金すべて使ってるんじゃないか?
僕は、掃除をあとにして、銀行にいって自分のお金を確認した。
案の定、全てではないがほとんどお金がなくなっていた。
マジかよ。
僕は、家に帰って長いソファーに座った。
クソ。
どうすればいいんだ・・・。
すると、
「あの、すみません。出てもいいですか」
とヴァルが言ってきた。
「ん?どういうこと?」
「人間の姿で出てきていいかということです」
「あぁ、いいよ。出てきても」
すると、どこから出てきたか知らないが、黒い霧が集まった。
そして、霧が急になくなったと思えば、ヴァルがいた。
「久しぶりにヴァルの人間の姿を見たわ」
しかし、ヴァルの服は白ではなく黒色のシースドレスを着ていた。
「どうしたんだ」
「いえ、困ってたようなので」
「そうだね。困ってるといえば困ってる」
僕は頭をかかえた。
「お金がなくてね」
「お金とは? 」
「神のところにはお金はないのか。取引の際に、商品の交換手段で使われてるのをお金と言うんだ」
「そういう物があるのですね。それじゃ、作ればいいのではないのですか」
「いや、それだと違法で捕まる」
「じゃあ、使われる前に時空から引っ張ればいいじゃないですか」
「うん? どういうこと? 」
「待ってください」
すると、黄色と白色の楕円が出てきた
そこで、ヴァルが楕円の中に手を突っ込むと、紙幣がたくさん出てきた。
「っっえ⁉ 」
「これが、お金ですか? 」
「そうだけど、どうやったの⁉ 」
「簡単です。あなたの貯金箱と金庫にあったお金を過去につないで、すべて取ったんです」
「えーすごいな。ちなみにそのお金を見せて」
ヴァルからもらったお金の合計金額を確認した。
合計金額は70万円以上あった。
銀行のお金を合わせたら、100万くらいかな。結構あるな。
節約をしたら、9ヶ月間くらいは暮らせるかな。
「ありがとう、ヴァル。おかげで命拾いしたよ」
「いいえ。私はただあなたを助けただけですよ」
と微笑んだ。女神だな、と一瞬思った。
「ただ......」
「うん? ただ? 」
「・・・服を買ってくれませんか」
こうして、ヴァルと二人の生活が始まった。
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