第91話 攻(4)
ひとり静かに、星空を眺めていると……
「プルル~♪」
ぼくの携帯電話に着信です。
この静かなダムに、けっこう響きますね。
……でも、ぼくに電話をかける人物は、限られています。
どなたでしょうか?
画面を見ると……
「天野 ミウ」さんです。
(ああ~。
今日は、新歓コンパだったね。)
毎年、新入生を歓迎する飲み会です。
2、3年生が企画します。
4年生は、就職活動と実習で、忙しいからですね。
けんじと、ともやくんも、参加していたはずです。
里美さんも。
………ぼく?
……ぼくは、去年参加したから、
もう……いいでしょう。
それに……
まだ、そんなところに出席できる度胸は、ありません。
……はい。
協調性がまだ無いのです。
……そういえば、去年の新歓コンパで、ともやくんと知り合ったんですよ。
ともやくんとの出会いは、けっこうハードだったね。
……まぁ、この話しは、ぼくたちの中に、留めておきましょう。
そして、里美さんたちも、当然参加です。
新歓コンパは、1年生が主役ですからね。
里美さんたちも、楽しんでいるかなぁ~?
……あっ?
ちゃんと、里美さんにも了解してもらってますよ~。
……ん?
でも、なんで……ミウさんから電話?
……まぁ、いいでしょう。
ちゃんと対応しますよ。
居留守?なんて使いません。
(携帯電話だと、なんて言うのかなぁ?)
ぼくも、大人ですから。
「はい。もしもし……」
「あっ? 出た出た!」
……いきなりのミウさんの言葉です。
人をオバケみたいに言わないでもらえます?
……今、南畑ダムだから……
ほんとに出たら、コワイでしょう!
「こうじくん。
今……ヒマでしょう?」
「……えっ?」
「どうせ、ひとりで車に乗って、遊んでんでしょう?」
「……はぁ……」
まぁ……その通りなんですけど……。
このミウさんは、里美さんの親友で、けんじの彼女さんです。
たしか……年下のはずですけど……
ぼくのことを「こうじくん」……と、タメ口で話してきます。
けんじにも、同様ですけど……。
まぁ……それが、彼女のステータスなのでしょう。
お姉様気質ですから。
そんな彼女に、ぼくごときが対抗できるはずもありません。
……いえ。
対抗する気は、毛頭ございません。
「はい。
ひとりでドライブしています。」
「うん。 よろしい。
……じゃあ、今すぐ天神に来て!」
「……天神?
……今からですか?」
「うん。
すぐに!
ただちに!
とっとと!
何分くらいかかる?」
「……1時間くらい……です。」
「遅い!
45分で来て!」
「……はい。
善処します。」
「よろしい。
……じゃあ、近くに来たら電話してね♪
プッ………」
なんて女の子でしょう!
用件も言わずに、命令するなんて!
……まぁ、想像は、つきます。
要は、迎えに来い!
……と。
……はて?
でも、ぼくの車は、ふたりしか乗れないけど……。
けんじは、知ってるはずだし……
迎えなら……
里美さん本人が電話してくる
……はず?
……あっ?
もしかして……
里美さんが、酔っ払った?
その可能性が大……ですね。
ああ見えて、お酒が大好きな里美さんですから。
だから、ミウさんが電話してきたのでしょう。
了解しました。
女子大生には、逆らいません。
それに……
里美さんのことも、心配です。
おまけに、この前……
ご両親にも、約束しましたから。
……では、とっとと出発しましょう!
ここから天神までは、距離はあるけど……
この時間帯なら……
ダッシュで、40分くらいでしょう。
里美さん……待っててね♪
あらあら。
なにやら、怪しい雲ゆきですね~。
カヤちゃんが酔いつぶれ?
こうじくん。
心配でしょうけど、安全運転でね。
では、次回は、新歓コンパの様相です。
お楽しみに。
春だね。




