第82話 廊(4)
お兄ちゃんは、大学生になると同時に、家を出ました。
そして、ひとり暮らしをはじめました。
……まぁ、同じ福岡市内ですけどね。
でも……わたしは、さびしかったです。
この家には、お兄ちゃんの部屋はあるけど、お兄ちゃん本人は、いないんですから………。
でも、いつまでも、クヨクヨしている場合では、ありません。
わたしは、行動しますよ!
区は、変わったけど、そこまで遠いところじゃなかったから、少し安心しました。
頑張れば行ける距離です。
わたしは、お兄ちゃんのところまで行くために、なんやかんやと理由をつけていました。
とくに「そうじ」という名目をつけて。
実際には、お兄ちゃんの部屋は、汚れていません。
アパート自体は、ボロだけど……。
お兄ちゃんは、中学のアルバイト以降、キレイ好きになりましたから。
(……くそ!)
あの職人たちには、ほんと……いろいろと、妨害されますね!
でも、いいんです。
しょせんは、「口実」ですから。
お兄ちゃんのアパートまで行くには、自転車では少し遠いので、原付バイクの免許を取りました。
お父さんにおねだりして、スクーターも買ってもらいました。
もちろん、かわいいヤツを。
ちなみに、わたしのスクーターは、「ジョグ」です。
かわいいし、速いし、とっても大好きです!
最近では、うまくカーブを曲がることも………
……おっと?
こういうところも、お兄ちゃんといっしょですね。
(……きゃっ!)
………コホン。
話しを戻しましょう。
……で、お父さんは、わたしには、ゲキ甘だったから、なんの問題もありませんでしたね。
……でも、たぶんそれは、理由があって……。
お父さんとお母さんは、お兄ちゃんの様子を わたしに見に行ってもらうためでしょうね。
お父さんとお兄ちゃんは、大学のことで、少しケンカをしていましたから。
お父さんは、もう……怒っていないから、お兄ちゃんも、家に帰ってくればいいのに………。
大学生になったお兄ちゃんは、少しは……マトモになってきました。
……いえ、マトモでは、ありませんね。
ますます、車オタクに、磨きがかかって………。
でも、いいんです。
お兄ちゃんは、高校のときには、バイクに一生懸命でした。
相変わらずの女性恐怖症ですが、バイクのおかげで、まだ人間らしく生きていました。
オタクだけど………。
まぁ、引きこもりで、暗い部屋の中で、パソコンばかりしているよりは、健康的だと思います。
ただ……わたしの不満は、ありますよ!
そのバイクだって、一人乗り用に改造するし!
ふたり乗りなら、うしろに乗せてもらおうと、思っていたのに!
……おっと?
すみません。
感情的になってしまいました。
そして、車に乗りはじめたお兄ちゃんは………
またしても、一人乗り用に改造するし!
いささか、わたしも言いましたよ。
「わたしが乗るときには、助手席をつけて!」
……と。
お兄ちゃんは、しぶしぶつけてくれました。
そして、何度かドライブにも行きました。
とっても、うれしかったです。
……でも、素直じゃないわたしは、相変わらずの態度でした。
それなのに、やさしいお兄ちゃんでした。
ほんとうは、素直なかわいい妹に、戻りたいのに………。
……あっ?
ひとつお兄ちゃんには、内緒があります。
それは……
お兄ちゃんが大切にしていたバイクのことです。
お父さんからも……
「くれぐれも秘密にしてくれ!」
……と。
(……ああ~。言いたい!)
……です。
でも……その日が来るまでは、ガマンしましょう。
……おっと?
話しを戻しますね。
そんなときに、カヤさんが現れました。
……小っちゃくて、かわいいカヤさんが………。
はっきり言うと、ショックでした。
悔しかったです。
まさか……
お兄ちゃんに、彼女ができるなんて………。
女性恐怖症で、オタクなのに………。
まぁ……見た目は、体育会系だけど、あんなにやさしいお兄ちゃんだから……
いつかは……とは、思っていたけど!
……いえ。
「お兄ちゃんのとなりには、わたししかいない!」
……って、思っていたから。
女性恐怖症のお兄ちゃんに、彼女ができるなんて………。
これっぽっちも、思っていなかったわたしです。
ほんとうに、ウカツでした。
……カヤさん。
はじめて見たときから、お兄ちゃんにピッタリの感じがしました。
カヤさんは、お兄ちゃんのことを理解したうえで、「好き」……と。
わたしは、意地悪にも、カヤさんを試しました。
……でも、カヤさんは………
ちゃんと、お兄ちゃんと向き合う覚悟がありました。
しかも……わたしの気持ちも、見透かすように……。
なぜか、この人には、かなわないような………。
でも、わたしも次第に、
「カヤさんと仲良くなりたい」
……と、思うようになりました。
ほんとうに、不思議な人です。
……天然だけど………。
そして、やっぱりお姉さんでした。
ひとつ年上のお姉さんでした。
わたしは、「妹」だったから、「お姉さん」というものに、少しあこがれていました。
カヤさんには、「お姉さん」がいて……
だから、「妹が欲しい!」……って。
おかしな人でした。
そんなことも、わたしたちが仲良くなった要因でしょう。
まぁ……いちばんの要因は、「サンリオ同盟」でしょうね。
わたしたちは、「かわいいモノ」が大好きですから。
そして……「お兄ちゃん同盟」も。
わたしは、カヤさんのおかげで、昔の「お兄ちゃんっ子」に、戻れました。
当のお兄ちゃんは、ちょっと、戸惑っているみたいですね。
その戸惑いも、うれしいです。
だって………わたしを見てくれているのですから。
「恋人」という席は、カヤさんに譲ります。
でも、わたしは、「お兄ちゃんの妹」なのです。
この席は、誰にも代わりは、できません。
わたしだけの席なのです。
世界で、ただひとりの「お兄ちゃんの妹」なのです。
この特権を最大に活かして、お兄ちゃんのとなりにいるつもりです。
あの夜のように………。
右側には、カヤさん。
左側には、わたし。
……だね♪
お兄ちゃん………
これからも、ますますよろしくね♪
……追申。
ヘンな妹で、ごめんなさい。
「ヘンな」……は、仕方ないよね。
お兄ちゃんの妹だもん!
それにしても、お兄ちゃんの「撫で撫で」には、完敗しました。
すごくやさしくて……
すごく安心できて……
すごく気持ちよかったです。
カヤさんの言う通りでした。
カヤ(ネコ)も カヤさんも、アレで、お兄ちゃんのトリコになったのね。
……わたしも………。
また今度、撫で撫でしてね………
お兄ちゃん❤︎
……アエカちゃん。
すっきりしましたか?
まぁ……
「お兄ちゃんラブ」炸裂中のアエカちゃんでした。
いつまでも、なかよしの兄妹でいてね。
さて、次回は、番外編です。
ちょっと……オタクな……
かなり……オタクな番外編です。
登場人物は………
お楽しみに。




