第71話 納(7)
後日談。
ミヤさん(里美さんのお姉さん)が、ちょうどいいタイミングで、帰宅しました。
ちなみに、土曜出勤だったみたいです。
ご苦労さまです。
ミヤさん……
里美さんから、お姉さんの名前を聞いたとき、ぼくは、ほんとうに、安心しました。
でも……少しだけ、残念に思ったことは、内緒です。
ミヤさんが、帰宅したときには、ぼくたちは、すでに里美さんの
「祝! シルビア納車会」に、突入していました。
お料理は、香さんが用意してくれました。
その手際には、かなり驚きました。
ほんとうに、すごいです!
香さん!
もちろん、ぼくも、お手伝いしました。
料理は、得意ですから。
すると、やはり……
「わたしも、手伝う~♪」
……と、里美さんも、かわいく参戦します。
ちなみに、里美さんは、サラダ担当でした。
それを見ていた大黒柱さんは……
「じゃあ、お父さんは、ここでゆっくりしているよ~。
みんな、がんばってね♪」
ソファで、くつろごうとした賢一郎さんでしたが……
「ダメよ。あなた!
あなたは、リビングのセッティングをしてから、ゆっくりしてちょうだい。」
……鶴のひと声でした。
「お父さん。よろしく~♪」
香さんと、里美さんからのラブコールでした。
「はい。はい。」
「はい……は、1回でよろしい。」
「……はい。」
賢一郎さんの負けですね。
(あはははっ!)
なんとも、微笑ましい光景でした。
里美家の温かい平和と、家庭内のヒエラルキーが、垣間見れました。
……まぁ、どこの家庭でも、同じみたいです。
お父さんは、やっぱり、弱い!
……でも、それが、平和な家庭の構図なのかもしれませんね。
……おっと?
見とれていないで、料理を進めましょう。
ちなみに、ぼくの担当は、お刺身の「お造り」です。
魚料理は、大の得意です。
ネタは、賢一郎さんが、今日のために、どこからか仕入れてきた「鯛」です。
りっぱな鯛です。
めでたい(鯛)です。
ほんとうに、里美さん想いの いいお父さんですね。
ところで、里美家のキッチンは、かなりの広さがあります。
それこそ、ふたりで、調理できるほどのキッチンです。
聞けば、香さんとミヤさんとのふたりで、よく料理を作るみたいです。
……まぁ、里美さんは、もっぱら……
アシスタントみたいです。
それでも、みんなで料理をして、みんなで食べる食事は、「家族だんらん」でしょうね。
ほんとうに、美しいことだと思います。
ぼくの家は……
ぼくのおかげで……かなり、いびつになってしまいましたから。
……おっと?
こんな暗い雰囲気は、いけませんね。
料理は、楽しくいきましょう。
「こうじくん。
包丁使いが、上手ね~。」
「ありがとうございます。
バイトで鍛えられましたし、ひとり暮らしなので、自然と…。
それに、魚料理が好きですから。」
「ふふふ。
いいお嫁さん……いや、お婿さんになれるわよ。」
そう微笑む香さんの目線が、里美さんを追っています。
……その意味くらい、ぼくにも、わかります。
それに、先ほど香さんとも約束しましたからね。
……でも、ここは……
「そうですね。
なれるように、努力します。」
謙虚に、答えます。
里美さんには、聞こえないように。
「ふふふ。
がんばってね♪」
香さんのゲキでした。
「あ~っ!
お母さんと、こうじさんが、なんかあやしい!」
里美さんからの……???(なぞ)のツッコミでした。
「ふふ。
こうじくんとは、なかよしになったの♪」
「……えっ?
だ……だめ~~!
お母さんには、お父さんがいるでしょ!」
「そうよ。
お父さんは、わたしの大切な人。
こうじくんは、息子になるかわいい男の子なの♪」
「……えっ?
………いやだ……お母さん。」
里美さんが、まっ赤になって、モジモジしています。
その仕草は、めちゃくちゃかわいいです。
ぼくも……かなり動揺しているけど……
平静を装って、刺身をひいています。
……本能で感じます。
ここでは、口を挟むのは、愚行だと……。
「こうじくん。
妻は、やらんぞ。」
……やはり、このお方が、口を挟みました。
「うるさい。お父さん。」
……やはり、地雷を踏んだ賢一郎さんでした。
賢一郎さんは、いいイジられ役ですね。
「ほほほ。
モテる女は、気持ちいいわ~♪」
……さすがは、元レースクイーンさんです。
そのタカビーな仕草が、めちゃくちゃキレイでした。
「もう……。
お母さんったら!」
里美さんも、お母さんには、かなわないみたいですね。
ほんとうに、なかよしの里美家です。
……おっと?
そんな脱線もしながら……
香さんの料理は、進んでいました。
(さすがは……お母さん!)
あらためて、驚愕しました。
―――そんな感じで、テーブルに、完成した料理が並びます。
里美さん作の「フレッシュサラダ」。
彩りがキレイです。
里美さんのセンスに、感心します。
そして、「小松菜の白和え」「エビフライ」「カニクリームコロッケ」「シーフードグラタン」。
これは、香さん作です。
どれも、里美さんの大好きなメニューですね。
そして……ぼく作の「鯛のお造り」と、鯛のアラで作った「お味噌汁」です。
「では。
カヤちゃんのシルビア納車~おめでとう~!
乾杯!」
賢一郎さんの音頭で、宴会が始まりました。
「かんぱ~い!」
……で、うわさのお姉さんのご帰還です。
「お父さん!
なんか、アマガエルみたいな車があるけど………
もしかして……カヤの車?
………じゃないよね?
カヤは、シルビアだもんね♪
じゃあ……あのアマガエルは……?」
いきなり、ドアが開いて、ひとりのキャリアウーマンが入ってきました。
このお方が……
うわさのお姉サマですね。
長身のスラリとした、とてもスタイルがいいお姉さんです。
薄グレーのスーツがキマっています。
髪は、社会人らしく、ひとつお団子に、まとめられていますけど、かなりのロングヘアのようです。
顔立ちは、香さんの娘だけあって、かなりの美人さんです。
(いつもすみませんけど……
ぼくの女性表現力は、ほんとうに語彙が乏しいです。
これから、訓練しますので、お許しください。)
……おっと?
話しの途中でした。
……で、その美しいお姉さまは、里美さんのお話しの通り、なかなかキッパリした気質のようですね。
いきなり、ぼくのセブンを「アマガエル」呼びです。
……その通りですけど。
「あっ?
……はじめまして。盛福 浩司です。」
ぼくは、部活さながらのあいさつをしてしまいました。
それは……やはり……
ぼくの本能です。
「……あっ?
……あんたがカヤの……?
あのアマガエル……あんたの?」
「はい。
ぼくのセブンです。」
「ふぅ~ん。
……まぁ、シブいやん。
趣味は、悪くないけど………。」
「ありがとうございます。」
「でも、あんた。
カヤを泣かしたら、わたしがぶっ殺すよ!」
「はい。ぶっ殺してください。
でも、ぼくは、カヤさんを泣かせないです!」
ぼくは、即答しました。
男らしく……たぶん。
それを見ている里美さんが、笑っています。
(ふふふ……おかしい。
先輩って、わたしと同じことを言ってる。)
やっぱり、わたしと先輩って、感性がいっしょなんだ。
……だから、わたしは………。
とっても、しあわせな気持ちのカヤちゃんでした。
「お帰りなさい。お姉ちゃん。
こっちきて、いっしょに食べようよ!」
「あ……うん。
まぁ……いいわ。
自己紹介がまだだったわね?
わたしは、ミヤ。
わたしのことは…「ミヤお姉さま」……と、呼びなさい。」
さすがは、香さんの娘さんです。
そのオーラは、間違いナシに、親子でした。
「はい。よろしくおねがいします。
ミヤお姉さま!」
ぼくは、キッチリと頭を下げます。
本能的に感じました。
「この人には、絶対に逆らっては、いけない!」
……と。
その後、ミヤお姉さまも乱入して、なかなかカオス的な、祝宴会になりました。
「あんた……
なんか、格闘技してる?」
「……えっ?
どうしてです?」
「……いや。
わたしも、やっているから……
なんとなく……
そういう雰囲気が……。」
さすが、剣道全国大会準優勝者!
そういう感覚は、鋭いですね。
「はい。キックボクシングを。
今は……自主トレだけですけど……。」
「ふぅ~ん。
わたしも、似たようなものね。
今度、お手合わせしよう!」
「お手柔らかに、おねがいします。
……あっ?
でも……ミヤお姉さまは、剣術ですよね?」
「うん。
高校生のときは……ね。
もともと、わたしは、小っちゃいときから、お父さんといっしょに、極真空手をしていたから。」
………やっぱり、賢一郎さんは、極真空手でした。
「……そうなんですね。
じゃあ、軽くやりましょう。」
「……ん?
かるく……?
……んなわけないやん!
マジスパーでいくよ!」
……マジですか?
………まぁ、このお姉さまには、逆らわない……と、誓ったから……。
「了解です。」
「よしっ!
じゃあ、今日は、飲め!」
「ありがとうございます。」
なぜか……ぼくは、ミヤお姉さまに、気に入られたようです。
ちなみに、ミヤお姉さまの愛車は、「34GT-R」でした。
しかも、ミッドナイトブルーの……。
カッコよすぎです!
「里美 ミヤ。24才 ♀ 172センチ ?キロ 全日本高校生剣道大会、準優勝者。趣味 格闘技観戦 」
その次の日。
里美家の特設鍛錬場にて。
……鍛錬場があるお宅……って?
いらぬツッコミは、やめましょう。
「ハァ……ハァ……
おつかれさまでした。」
「ハァ……ハァ……
おつかれさん。
こうじ……あんた、強いね。」
「ハァ……ハァ……
ありがとうございます。
ミヤお姉さまの方こそ、たいがいですよ。
マジで強いじゃないですか!
まだまだ、現役じゃないですか!」
「ハァ……ハァ……
ありがとう。
今度は、わたしのRと、勝負しようか?」
「……えっ?
ムリですよ~。
ぼくのセブンは、180psくらいですよ~。
Rとは、勝負になりませんよ~。
イジメですか?」
「ふふふ。もちろんよ!
あのRは、400psは、出てるわよ。
わたしの圧勝かしら?」
「よ……400psですか?
ちなみに……どんな仕様です?」
「ふふふ。
えっと……ね………」
それからは、ヲタトークのバトルになりました。
いや~。
里美家は、なんて素晴らしい人たちなんでしょう!
ちなみに、昨日の宴会が、終わったあと……里美家に、宿泊させていただいたぼくでした。
「飲酒運転は、いかんよ!」
……と。
ほんとうに、お世話になりました!
……で、ミヤお姉さまとのヲタトークを終えたぼくたちは、里美さんのシルビアドライブツアーに、行くことになりました。
来週は、大分ツアーが待っています。
それまでに、里美さんも、このシルビアちゃんに慣れるでしょう。
そして……それぞれの愛車で、出発です。里美さんは、ワクワク、ピコピコです。
とっても、たのしそうですね。
賢一郎さん……「トミーカイラZZ」。
香さん……「ミニクーパー」。
ミヤお姉さま……「34GT-R」。
カヤさん……「S14シルビア」。
そして、ぼく……「サバンナRX-7」。
そうそうたるサウンドを 響かせて……レッツゴーです。
もちろん、ここ(室見が丘)を出るまでは……静かに。
ルートは、「室見が丘」~「唐津の鏡山」~「呼子」を1周コース。
呼子でイカを食べて、福岡へ帰る。
定番コースですね。
里美さんは、ほんとうに、たのしそうでした。
やさしい家族につつまれて、ほんとうにたのしそうでした。
いい相棒にも出会えて、ほんとうによかったね!
里美さん。
ぼくは……この場所にいることを ほんとうに感謝します。
おつかれさまでした。こうじくん。
里美家の人たちとも、話し会えて、よかったね。
これで、カヤちゃんとは、公認の仲だね。
しかし……里美家の人々は、濃い人たちですね~。
たのしそうです。
とくに、ミヤお姉さまは………。
がんばってね~こうじくん。
さて、次回は、待ちに待ったハーモニーランドツアーですよ!
よかったね~カヤちゃん。
では、お楽しみに。




