第7話 到
「はぁ~!」
とりあえず、深呼吸をして、オーバーヒートを回避します。
「ふぅ~!」
おかげで、ぼくの心臓も、少し落ち着き、アイドリング状態になりました。
トリップから、脱出できました。
ぼくがトリップしている間に、無事に買い出しも、終わったようです。
(みなさん…ごめんなさい。)
では、気を取り直して、再び出発です。
ですが…まだ問題がありました。
本日の行き先ですが……
行く目的の地ですが……
我がホームグラウンドの南畑ダムの上流に位置する「脊振ダム」なのです。
誰が決めたんだよ!
もっと、他の場所があるだろ!
海とか、山とか……
あっ? 脊振は、山だった………
なにも問題がありませんでした。
…いや、そういうことではなく……
とにかく、ホームグラウンドの近所です。
合コンバーベキューなんてところを、仲間に見られたら、絶対にイジられます。
ぼくは、峠仲間ウチでは、超硬派で通っているからです!
…おっと? すみません。
思わず、感情的に、なってしまいました。
まぁ…昼間だから、大丈夫だとは、思いますけど……。
走り系の車には、要注意です。
では、おそるおそる行きましょう。
目的地の脊振ダムまでは、もう少しかかります。
脊振ダムは、脊振山の中腹あたり…標高450メートルあたりにあるダムです。
釣り人が多く、ヘラブナやブラックバス、冬季では、ワカサギ釣りが人気です。
脊振山の頂上には、自衛隊のアンテナ基地があります。
その基地までのルートは、林道になっていて、ダートの練習ができます。
冬には、雪が積もるので、4駆軍団が集まるコースです。
そんな自然豊かなところにある脊振ダムは、市民の憩いの場所なのです。
まずは、下流にある南畑ダムまでを攻略しましょう。
標高およそ250メートルの南畑ダムまでは、沢伝いにのぼる峠道です。
ぼくは、ふつうの普通車で通るのは、初めてです。
チョ~緊張します。
「あっ? ここって…40キロ制限なのか…」
ふだんは、なにも考えずに、走っていたから、反省です。
ちゃんと、速度を守って…コーナーでは、スローイン・ファストアウト……いやいや。
スローアウトします。
超安全運転で、がんばります。
6人も乗っているので、それなりに重量を感じます。
しかも、ふつうの普通車…オートマの車ですが、ちゃんと、上ります。
けっこう、トルクがあるみたいです。
足まわりも、それなりに、しっかりしていて、コーナーでも、そこまでロールアウトしません。
「スゴイです!」
素直に、感心しました。
さぁ、とうとう、ダムコースに突入します。
慎重に行きましょう!
…って、ミラーを見たら、1台の車が、張りついています。
あおられています!
セブンのときには、あおられたことがなかったから、初めての体験です。
……でも、こんな昼間っから、こんな狭いクネクネの峠道で、ふつうの普通車があおっています。
しかも、同系列のワンボックスカーです。
ある意味…恐怖を覚えます。
「カチッカチッ…」
ぼくは、ウィンカーを出して、車を避けます。
この道は、よく知っているから、かわせるところに、車を止めます。
すると、うしろの車は、すごいエンジン音をさせて…オーバーレブしそうな音を出して、抜いて行きました。
(運転が、荒いなぁ~。)
車が、かわいそうです。
ハザードランプも、出しません。
ぼくたちは、前の車が譲ってくれたら、「ありがとう」の意味で、ハザードランプを出すんですけど……。
世間一般では、そういう暗黙のルールは、ないようです。
まぁ、ぼくが遅かったから、仕方がないのでしょう。
「お急ぎの方は、お先にどうぞ。」
…と、思っていたところに、また後部座席から…ともやくんが、叫んでいます。
「こうじ! おまえ、運転ヘタすぎ!
帰りは、俺が運転してやるよ!」
…と。
……いやいや。
キミたちは、お酒を飲むでしょう?
飲酒運転は、ダメだよ!
それに、こんないい天気だし…春うららだし…景色を楽しみながら、南畑をゆっくり走るのも、悪くないね!
…と、ぼくは、思っているのだよ。
みんなを乗せているし、女の子もいるからね。
それに、こんな車で、トバしても、楽しくないよ。
…いや、逆に危ないよ!
もし…ダムに落ちたら、大惨事だよ!
ニュースのトップを飾るよ!
大学でも、大騒ぎになるよ!
……と、言いたいところだけど…
今日のぼくは、大人のフリを続けます。
「まぁまぁ~。 もうすぐ着くから、ゆっくり行こうよ。 あっ?ほら、まだ桜が残っているよ。 キレイやね~。」
そう言って、車を走らせます。
一堂拍手!
またまた、罪悪感のぼくです。
ふと、考えることがありました。
もし、ゆうじくん(今日、欠席したやつ)が予定通りに、参加していたら、誰が運転するの?
この車は、けんじの家の車だから…けんじが運転するのかなぁ?
でも、あいつは、飲んべえだから、絶対に帰りは、運転できないよね?
ともやくんも、同じでしょう。
ゆうじくんは、免許を持っているのかなぁ?
……って、キミたち…みんなで、酔っ払い運転をするつもりだったの?
あぶないよ!
それこそ、捕まったら、退学もんだよ!
…と。
大きなお世話だろうけど…。
今日、ぼくが運転してよかったです。
一安心です。
その後、ともやくんに、なじられながらも、無事に脊振ダムに、到着しました。
うん。うん。
飲酒運転は、イカンよ~。
とくに、女の子を乗せているからね。
しかし、こうじくん。
立派に、務めを果たしたね。
……あおられながらも……。
えらい、えらい。
でも、ほんと安全運転がいちばんだよ。
あおってくる車には、すぐに、道を譲ることが、平和への近道です。
でも、ハザードランプくらいは、出してほしいですよね?
…まぁ、そういう礼儀を持っている人は、あおらないでしょうけど…。
春だし…安全運転で行きましょうね。
さて、次回は、やはりプチ事件が起こりますよ~。
こうじくん…災難は、続くんです。
お楽しみに。