第68話 納(4)
「里美 賢一郎 51歳 ♂ 179センチ 88キロ 株式会社「里美」の現代表取締役。 趣味 娘たちのアルバム作成(成長記録) 」
「では、わたしの愛車も紹介しよう!」
里美さんのお父さんは、シートを外しました。
ぼくは、ドキドキワクワクで、その瞬間を待ちます。
(あのシルエットからは、いくつか想像できるけど………)
その車とは………。
ボディーが、あきらかになりました。
お父さんの愛車は、ぼくが想像していたより、はるか斜め上でした。
究極の車オタクでした。
「あのぅ………
里美さんのお父さん…………」
「ははは。
わたしのことは、賢一郎……でいいよ。」
なかなかノリがいいお父さんですね。
助かります。
「失礼します。
賢一郎さん……この車って……
トミーカイラですか?」
「おっと?
知っていたかい?
さすがは、車オタクだね~。」
「……いえいえ。
雑誌で見ただけですよ。
実物は、はじめてです。」
「ふふふ。そうか~。
では、中を見てみるかい?」
「いいんですか?」
「もちろんだよ。
存分に堪能してくれ。」
「ありがとうございます!」
なんて素晴らしい人なのだろう。
そして……
今のぼくは、あのときの里美さんと同じように、ピコピコ、フリフリでした。
「トミーカイラ ZZ」
トミタ夢工場から発案されたスポーツカー。
ボディーデザインは、あの由良氏が手がけたという。
コンセプトは、「軽量コンパクト」
そして…「大人のオモチャ」です。
その名の通り、走りに特化したマシンです。
ボディーは、アルミとFRPで構成されています。
外観は、ちょっと「オチャメ」な感じの愛らしいフロントマスク。
出目金の丸目2灯のヘッドライトが特徴的です。
ボディーカラーは、シルバーです。
ボディー形状は、「オープンツーシーター」ですね。
まさに、「大人のオモチャ」です。
シートは、もちろんフルバケですよ。
……おっと?失礼?
ナビは、セミバケに、換えてありますね。
たぶん奥様のために、リクライニング機能のあるセミバケットシートにしているのでしょう。
賢一郎さんのやさしさがわかる仕様ですね。
パワーユニットのエンジンは、「SR20DET」がミッドシップに、配置されています。
由良氏は、
「ミッドシップこそが、スポーツカーだ!」
…と、言っていました。
さすがです。
ミッションは、5速MTのNA仕様ですね。
「NA」とは、「ノーマル・アスピレーション」の略です。
日本語で言うと、「自然吸気エンジン」ですね。
いわゆる、「キャブ仕様」です。
しかも、キャブは、「ケイヒンキャブ」ですよ。
シブすぎです。
SR20のNAエンジンということは、
シルビアのQsか?
プリメーラと同じエンジンですかね?
車輌重量は、700キロほどです。
だから、2リッターのNAエンジンで、気持ちいいドライブができる仕様ですね。
これが、ターボだったり、3リッター以上のNAエンジンだと、かなりのじゃじゃ馬になりそうです。
かといって、1.5リッターあたりだと、パワー不足を感じるでしょうね。
ほんとうに、バランスがとれたマシンと言えます。
そして、肝心のメイン構造は、ほぼ、フォーミュラマシンと同じです。
足まわりも、ダブルウィッシュボーンで、とてもカッコイイですね。
とても、キビキビ動いて、おもしろそうです。
乗ってみたいですね~。
……ぼくのオタク魂に、火がついています。
「乗ってみたいかね?」
「……えっ?
いいんですか?」
「いいともっ!」
「やっ…………」
「………と、言いたいところですけど、
おふたりさん!
そろそろ、出発しますよ!
あなたたち……
当初の目的を 完全に忘れているわね?」
………突然現れた、その声の持ち主は……なんともキレイな女性……
もとい、美人の奥様でした。
………そうでした。
里美さんのシルビアの納車でした。
それを忘れて……ぼくは………。
猛烈反省します。
賢一郎さんも、同じみたいです。
「はははは。
悪い悪い……つい………ね。
こうじくん。紹介しよう。
わたしの妻の香だよ。」
(……コウ?
まさかやん???)
一瞬、自分の耳を疑いました。
………ちょっと……恐ろしい偶然ですね。
里美さんのお母さんの名前も……
我が家のネコちゃんと、
同じ名前とは………。
ぼくのウチと、里美さんのウチって、なにかの因縁で結ばれているのでしょうか?
………はっ?待てよ?
里美さんには、お姉さんがいると、言っていましたね。
………まさか………
お姉さんの名前は………
ユウか?マレ……
だったりして………?
「こうじ先輩?
どうしたんですか?」
トリップしていたぼくに………
里美さんが、現実に、戻してくれました。
「………あっ?
すみません。
香さんのあまりの美しさに、固まっていました。」
「……………。」
一堂沈黙です。
その沈黙のあと………
大爆笑が!
ガレージの中に、響きました。
「せ……先輩………
いいボケです!」
おなかを抱えて、悶絶している里美さん。
………そこまで、ウケますか?
「 ヒヒ………
さすがは………
カヤちゃんの彼氏………
ヒヒ………。
しかし……妻は、やらんぞ!」
もうひとり………悶絶しているオジサマ。
………あなたもですか?
ぼくは、里美親子のツボが、よくわかりませんでした。
「あら?いい子ねぇ~。
わたしの魅力がわかるあなたを 歓迎します!」
………この人もか?!
「それから、
あなた………ハマりすぎです!」
なんか……
妖しげな笑みの香サマです………。
美人の微笑みで、このガレージの気温が、2℃ほど低下したことには、触れない方が身のためでしょう。
しかし、冗談ヌキに、里美さんのお母さんは、とてもキレイな女性です。
身長は、そこまで高くありませんけど、里美さんを「美人側」に、特化させたイメージですね。
ほんとうに、美人奥様だと思います。
ウケのお母さんとは、全然違いますよ。
(お母さん……ごめんなさい。)
そして………
ぼくの発言は…………
ぼくは、地雷を踏んだかもしれません?
「里美 香 ?歳 ♀ 167センチ ?キロ 元レースクイーン。
趣味 ガーデニング。 」
さて……
前回から続き、ヲタトークが炸裂していますけど……
ちゃんと、ついて来ていますか?
この話しに、ついて来れるあなたは、立派な車オタクです。
自慢してください。
さて……、ふたりのヲタトークを中断させた奥様こと……香サマ。
カヤちゃんのお母さんだけあって、やっぱり変わっています?
まぁ……母は、強し!……ですね。
さて、次回は、やっと納車に向けて、出発します。
よかったね~カヤちゃん。
でも……
こうじくんには、まだまだ試練がありますよ~。
お楽しみに。




