第65話 納
とうとう……
待ちに待った………
里美さんの……S14シルビアちゃんの 納車の日が、来ました。
おめでとうございます。
「カヤさん。
明日、納車だね。
おめでとう。
明日……何時くらいに、迎えに、行きましょうか?」
そうなんです。
ぼくが、里美さんを 車屋さんまで、連れて行くことを約束していたのです。
「こうじさん。
……ちょっと……
予定が変更に、なりまして……。」
「……えっ?
納車が、遅れるの?」
「いえいえ。
……そっちのことじゃなくって……
わたしの方なんです。」
「……えっ?
どういうこと……ですか?」
里美さんは、少しバツが悪そうに、話し出してくれました。
なんでも、お父さんが、納車に、いっしょに、行きたいらしいです。
里美さんのお父さんは、仕事がなかなか忙しい人みたいで、休みが、あまりないみたいなんです。
でも、明日の土曜日に、偶然にも、休みが取れたみたいなのです。
「別に、いいんじゃありませんか。
お父さんも、カヤさんのことが、心配なのでしょう。」
「まぁ……
そうなんですけど………。」
ぼくとしては、少し残念ですけど、お父さんには、かないません。
それに、シルビアちゃんの購入に、あたっては、お父さんが、援助してくれたらしいので、当然だと思います。
ぼくは、後日……
ゆっくりと、拝見させていただくことに、しましょう。
………えっ?
違う……?
お父さんが、里美さんを 連れて行くんじゃなくって………
ぼくたちに、同行したいらしいです。
その目的とは……?
そうらしいです。
ぼくですね。
里美さんとぼくが、お付き合いをはじめたことを ご両親には、伝えていました。
ですけど……
ぼくは、まだ、里美さんのご両親とは、会ったことがないのです。
まぁ……
お父さんが、忙しい人ということも、ありましたけど……。
……で、そのイベントが、明日……
急きょ、決まりました。
おそらくは、ぼくに拒否権は、ないはずです。
あるはずがありません。
もし……
拒否権を発動しようものならば………
一生、里美さんとのお付き合いを 認めてもらえないでしょう。
それに、ぼくは、そこまで……
社会不適合者では、ありません。
ただ……女性恐怖症なだけですよ。
…………世間では、りっぱな不適合者ですね。
……まぁ、そんなことは、どうでもいいのです!
そんなことよりも、お父さんとの面談ですよ!
ドタバタしても、仕方ありませんね……。
……まぁ、なるようにしか、ならないでしょう。
ぼくは、まな板の上の鯉です……から。
ただ……
ひとつの光を 信じましょう。
……で、今日……
里美家まで、出向いているぼくなのです。
なんでも、里美さんのお父さんは、車が大好きな人らしいです。
まぁ……里美さんを幼いときから、オートポリスに、連れて行くのですから……
そうでしょうね。
そして、ご自宅には、「お父さん専用車両」が、あるらしいです。
その専用車両は、教えてもらえませんでしたけど……。
なぜ?
まぁ、いいでしょう。
今日の楽しみですね。
そして……
里美さんが車オタクになった原因のお父さんに、対面できるのです。
里美さんのお父さんは、ぼくたち車オタクにとっては、ある意味……すばらしいお父さんかもしれません。
……これが、ひと筋の光ですね。
ぼくは、緊張しますけど……
内心は、楽しみです。
………しかし!
本日………ぼくは、セブンで里美家に、来ることを 聞かされました。
その意図とは………
お父さんが、ぼくの愛車に、興味があることは、明白ですね。
ぼくも、自分の愛車には、自負を持っています。
どこの車オタクに見せても、恥ずかしくないほどの……です。
……ヘンなプライドで、ごめんなさい。
……しかし、問題もあるのです。
「……えっ?
大丈夫ですか?
室見が丘ですよね?
ご近所さんに、ご迷惑では………?」
そうなんです。
里美さんの家は、あの「室見が丘」に、ある…と、聞きました。
室見が丘……この界隈では、高級住宅街として、認知されています。
静かで、閑静な住宅街のはずです。
そんなところに、ぼくのセブンが………
ちょっと………コワイです。
「それは、大丈夫だと思います。
暴走族みたいで、なければ……。」
ニコッ♪
笑顔の里美さんには、かないません。
ぼくも、ハラを決めましょう。
「………わかりました。」
了承します。
なるべく……
静かに……
回転数を抑えて行きましょう!
(2000rpmくらいで!)
いや~よかったね~。カヤちゃん。
待ちに待った納車だね。
……でも、こうじくんには、試練が待っているね!
まぁ、男の子でしょ?
しっかり、いきなさい!
それに、そこまで、肩ひじ張らなくていいよ。
ただ……素直に、誠実に……だね。
さて、次回は、お父さんとの面談ですよ。
カヤちゃんのお父さん……どんな人なのかなぁ?
では、お楽しみに。




