第56話 友(2)
学校から、少し離れた河原に、アエカちゃんは、いた。
イジメている男子生徒10人ほどに、囲まれて……
包囲されて……
追い詰められていた。
そして………
河原から、川の中へと、突き落とされたのだ!
「……………っ!!!」
俺は、怖くて動けなかった。
足がすくんで、動かなかった。
止めるにしても、相手は、男子生徒10人。
到底、勝てるはずもない。
小学6年生……と、いえども、もうすぐ、中学生になるのだ。
体格は、それなりだった。
おまけに、その中には……
ひとり、やっかいなヤツがいた。
そいつは、俺たちの中でも、あまり評判が良くないヤツだった。
オヤジが、大会社の重役かなにかで、めちゃくちゃ威張っていたヤツだ。
名は、「安田」という。
はっきり言うと、俺がいちばんキライなヤツだった。
「オヤジは、たしかに、その会社では、エライだろうが、おまえには、関係ないだろ!
学校にまで、親の権力を持ってくんなっ!」
俺は、そう思っていたが……
実際には、そんなことは、口には、しない。
俺は、ちゃんと、モノゴトを「理解しているフリ」をしていたガキだからだ。
ただ……
この1件で、俺の中のなにかが……
方向転換した。
しかし……
まだ、実行することは、できなかった。
安田……6年生の中でも、大柄な男子生徒。
身長は、170センチくらいか?
人を見下したような顔つきには、ほんとうに、ヘドが出る。
マジで、関わりたくない存在だった。
………で、見るからに、イジメの筆頭は、コイツだろう。
………俺が、ウダウダと考えている間に、こうじは、動いていた。
「…………アエカっ!」
そりゃあ、かわいい妹が、川に突き落とされたのだ。
黙って見ていられるわけがない。
しかも、妹想いのこうじ。
まだ、寒い1月の中………
こうじは、迷わずに、川の中へと、飛び込み……アエカちゃんを助けた。
俺も、こうじのおかげで、動くことができた。
アエカちゃんを抱えたこうじを 俺は、河原の上へと、引き上げた。
まぁ、実際的には、溺れるほどの深さはない川だったけど……
………いや。
そんなことは、関係ないな。
冷たい水の川に、女の子を突き落とす行為は、断じて、許されないだろう!
いや……許しては、いけないだろう!
立派な犯罪行為だ!
立派な殺人行為だ!
………無事……
とは、言いがたいアエカちゃんを 川から助け出したこうじを……
その様子を………
バカにするように、笑いながら、見ていたアイツらは………
ほんとうに、最悪の最低で………
でも、俺は、なにも言えず………
ただ……
こうじの手を握って………
今、思うと、こうじに対して、ほんとうに、悪かった……
申し訳なかった……と、思うよ。
それから………想像を絶することが起きた。
俺に、アエカちゃんを預けたこうじは、その笑っている男子生徒10人を相手に、殴りかかった。
まぁ……10対1なのだ。
結果は、見えている。
………でも、俺の予想とは、違う結果が起きた。
こうじは、強かった。
いや…………強すぎだった。
はじめ、3人ほどを 倒した。
ほんとうに、あっという間だった。
こうじの「右ストレート」「左フック」「右ハイキック」の3発で、3人を撃沈させた。
まぁ……向こうも驚いただろうが、見ていた俺も、驚いた!
そのあと、こうじは、2~3人に、取り抑えられたけど………
確実に、ひとりずつ………
確実に、ひとりずつ………
倒していった。
………いや。潰していった。
ひとりずつ……
確実に……!
やはり、最後には、イジメの筆頭……安田が残っていた。
……でも、こうじの方も、ボロボロだった。
俺から見ても、
「よく立っていられるな……?」
……というくらい、ボロボロだった。
鼻血がたくさん出て、片目は、腫れあがり、服は、破れまくりで……
体のあちこちは、内出血していた。
満身創痍のこうじ。
それでも……こうじの瞳には……
確実な闘志があった。
俺も……止めることができないくらいの……。
でも、俺の心配は、杞憂に終わる。
最後の男……
安田を 完璧に叩き潰したこうじだった。
そこには、ほんとうに、「情け」は、なかった。
そのあと……
俺は、水に濡れたアエカちゃんを自分のジャンパーで、包み……
かなりのケガだけど……意外に平気そうなこうじに、トレーナーをかぶせて……
ふたりを家まで、送り届けた。
(実際には、こうじのケガは、かなり重傷だったけど………。)
「ほんとうに、ありがとうね。山中くん。」
ボロボロのこうじの笑顔だった。
「気にすんな。友達だろ。」
俺は、胸の奥が熱くなった。
俺の懸念としては………
アイツらも、あれだけハデに、こうじに、のされたのだ。
……仕返し……は、ないだろう。
10対1で、負けた。
しかも、こうじは、素手だった。
アイツらは、木の棒を持っていた。
こうじが……叩き折ったけど………。
こうじの骨も折れたけど………。
しかも、自分たちは、女の子をイジメていた。
俺だったら、恥ずかしくて、自殺モンだけど………。
まぁ、アイツらは、クソだから、なんとも思ってないかもしれない。
でも……あの怒り狂ったこうじを 見たあとは、なにもできんだろう。
………と、俺は、考えていた。
それに……あるがままの事実は、こうじの両親と、担任に、伝えた。
アイツらに、なんらかの処分を期待して………。
なんだか……すごい過去だったんですね……。
こうじくん……妹想いのいいお兄ちゃんなのね。
そんなこうじくんを好きになっていたけんじくん。
ふたりは、親友になったんだね。
よかったよ。
これで、ミウちゃんも、少しは、こうじくんを見る目が変わるかもね。
………って、まだ終わりじゃない?
けんじくんも、こうじくんと同じで……
沼にはまった人なんです。
だから、話しが長いんです。
……ふぅ。
いいでしょう。
けんじくん……心すむまで、語ってください。
……ということで、次回も、お楽しみに。




